確実に効果をもたらす
LED照明への交換

 照明の分野における有効な節電対策として注目されているのが、LED照明への交換だろう(本ページ末尾のコラム参照)。LED照明であれば、白熱灯の約8分の1、蛍光灯の約6割の消費電力で同等の明るさが得られ、寿命は数倍から数十倍と長い。導入費用はかかるが確実に効果を得ることができる。課題のコストも低下傾向にある。ぜひ検討してみたい節電対策である。

 ちなみに、今年6月に発表された財団法人日本エネルギー経済研究所の試算によれば、現在使用されている白熱灯と蛍光灯をすべてLED照明に置き換えると、日本の年間総電力消費量の9%に当たる922億キロワットの省電力が可能になるという。これは原子力発電所の13基分に相当する。今の日本のエネルギー危機を救う切り札にもなり得るくらいのインパクトを持っているのである。

最新のIT機器の導入は
節電効果も高い

 OA機器、特にIT分野で真っ先に挙げられるのが、PCを最新のものに入れ替えることだ。こちらも確実に節電効果が期待できる。マイクロソフト(日本法人)が行った実験によると、最新のOSであるWindows7では、一世代前のWindows Vistaに比べて消費電力が約30%少ないという。終了やスタインバイ状態からの復帰時間の短縮、使われていないときの電力消費のきめ細かい制御など、先進の技術を駆使したさまざまな電力管理機能が装備されているからだ。

 ハードウエアの性能面からみると、プロセッサーの処理スピードが上がれば、それだけ短時間で処理が終わり、当然、消費電力も少なくなる。また、デスクトップPCよりノートPCのほうが消費電力は少ないので、デスクトップPCをノートPCに替えることでも、大きな成果を得ることができる。

 プリンターを省電力型の複合機に置き換えることも有効な節電対策だ。常時稼働しているわけではないプリンター、スキャナー、FAXなどを1台の複合機にまとめることで、統合の効果が得られることに加えて、最新の省電力機能によって、大幅な節電が望める。1週間の消費電力を示すTEC値で40%削減している例もある。

ITの利用方法を変えると
さらに大きな省エネ効果が

 仮想化によるサーバの統合も節電効果は大きい。サーバの台数を減らせば、その分消費する電力は少なくて済み、サーバの設置スペースが小さくなることで、それにともなう照明や空調の電力も削減できる。物理サーバ6台を仮想化サーバ1台と管理サーバ1台に統合し、消費電力を67%削減したという事例もある。サーバが統合されることで、管理コストも大幅に削減できたという。

 仮想化の延長線上で検討したいのが、データセンターの活用だ。自社でサーバを持たずに、クラウドサービスなど外部のデータセンターを利用することで、サーバに関連する消費電力はゼロになる。運用管理の手間もかからない。データセンター側でも仮想化によって省電力化が進められるので、IT全体としては単なる付け替えではない節電効果も期待できる。

 震災の影響で注目されている在宅勤務(テレワーク)も検討したい節電対策だ。リアルな移動を伴うことなく、インターネットを介していつでもどこでもオフィスと同じように仕事ができるテレワークは、オフィスだけでなく、ビジネスにおける究極の節電対策と言えるだろう。ただし、ネットワークを介して重要なデータをやりとりするだけに、セキュリティにはしっかりと配慮したい。

 こうした個々の節電対策はさまざまなものがある。数ある選択肢のなかから、自社の業態や風土に合ったものを考えたい。その前に重要なのが“今”を知ることだ。ITや照明だけでなく、どこでどれだけ電力を消費しているのか全体を見える化することで、対応策が判断でき、効果も想定できる。現状を把握するための管理ツールを活用することが、節電対策の第一歩と言えるのではないだろうか。 

■LED照明への交換で62%の消費電力削減を実現
~東大グリーンICTプロジェクト

本郷キャンパスを実証実験場として、ICTを活用したファシリティのグリーン化に関する研究開発と実証試験を推進している「東大グリーンICTプロジェクト」。今年4月、同プロジェクトは大塚商会と共同で、構内の照明をLEDに交換することによる効果を検証した。

同大工学部2号館の照明1046個をLEDに置き換えたところ、明るさや雰囲気に違和感はなく、消費電力の計測では62%の削減に成功した。従来から省エネタイプの照明を使っていたというから、LED照明への交換の効果は非常に高いことが実証された。


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