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コンテンツに応じて、最大120Hzのリフレッシュレートを実現するProMotionを備えるiPad Pro。一度見ると、他のデバイスに戻れなくなってしまう可能性が高いです

 今週のバークレーは最高気温33度と真夏日続きの1週間です。こちらでは「インディアンサマー」と呼ばれる、暑い1週間が訪れるタイミングは6月や9月などまちまちですが、まあこれ以上気温が上がることはない、という安心感もあります。

 ネバダ州ラスベガスでは、45度を超える模様。まあ、そこまで暑いわけじゃない、という話でもありますし、夜はちゃんと15度まで下がるので、寝苦しいということもありません。

 ただ、この暑さを生かして、海に行ったりしておかないと、また来週からは最高気温20度前後の涼しい日々が帰ってきてしまいます。

10.5インチのiPad Proのレビューに没頭

 さて、そんな暑さが続くバークレーで、iPad Pro 10.5インチモデルのレビューを担当していました。Appleが珍しくWWDC 2017の基調講演でハードウェア群を発表しましたが、その中でも肝いりは、10.5インチという新しいサイズを採用したiPad Proでした。

 iPadはここ3年以上、前年比の販売台数で苦戦する、長い低迷期に入っています。iPad Pro 9.7インチモデルは、老朽化しつつあるPCの買い換え市場を狙う戦略モデルとして2016年3月に投入されましたが、その成果をあげられずにいました。

 そこで今回、iPadの伝統的な9.7インチというサイズから、10.5インチへと拡大させて登場したわけです。

 カバーを兼ねるSmart Keyboardのキートップも2mm拡大し、日本市場で待望のJISキーボードも用意。「PCからの買い換え」という戦略をグローバルできちんと進めていく体制がやっと整った、といったところでしょうか。

 また、Apple Pencilをより活用してもらうべく、Apple Pencil用のレザーケースや、iPadとApple Pencilを同時に収納して持ち運べるレザースリーブといったアクセサリも登場させました。

10.5インチのサイズに感じるノスタルジー

 iPadは9.7インチ。これが2010年登場以来のサイズでした。途中で7.9インチのiPad mini、そして現在も残されている12.9インチのiPad Proが登場しましたが、やはりiPadと言えば9.7インチというイメージが筆者の中でも強かったのです。

 その伝統を捨てて拡大した10.5インチというサイズ。確かに実際に触れてみると、ギリギリまで拡大されたディスプレイ領域いっぱいに表示されるコンテンツは、インチ数のわずかな差以上に拡大した印象を受けます。

 ちなみに普段筆者が使っているMacBook Proは15インチから13インチにダウンサイジングしましたが、もちろん10.5インチよりも大きなディスプレイを備えています。

 ただiPadでは全画面でアプリを実行することが基本であるため、MacとiPadの双方で利用できるアプリを開いてみると、iPadの方が無駄になっているスペースが小さい印象すら受けます。

 筆者はソニーの薄型ノートパソコン、VAIO NOTE 505Xを使っていたことがありますが、そのディスプレイサイズが10.4インチ、厚さ23.9mmというものでした。iPad Proは10.5インチ、厚さ6.1mm。同じようなディスプレイサイズながら、厚さは約4分の1になった「板」が、iPad Proということになります。

 そう言われると、急にiPad Proの10.5インチというサイズに納得感を得てしまうのは、505Xを気に入って使っていたからでしょうか?

ディスプレイの破壊力は思った以上だった

 さて、AppleはiPadに対して、率先して新しいディスプレイのテクノロジーを導入しています。デバイスの表面のほとんどをディスプレイが覆っているデバイスなので、そのディスプレイを進化させることは、デバイス自体の進化を意味するからです。

 AppleはiPad Proで、環境光に合わせてホワイトバランスを調節するTure Tone、高色域のP3対応など、新しい魅力をつぎ込んできました。今回のiPad Proには「ProMotion」と名付けられた技術が搭載されました。

 技術と言っても、ディスプレイのリフレッシュレートをこれまでの60Hzの倍の120Hzに引き上げたことを指します。加えて、コンテンツに応じて必要十分なレートにステッピングして対応させるため、動きの少ないコンテンツや24フレーム/秒の映画を見る際は、より遅いレートに落として省電力性を確保するという仕組みです。

 120Hzというと、日本では眉をひそめる話もあったようですが、Safariでウェブページをスクロールするだけで、その魅力にとりつかれてしまうほど、ProMotionのディスプレイは目で見て分かる差が出ます。一度iPad ProのProMotionの動きを見てしまうと、iPhoneやMacなどのあらゆるディスプレイの動きがかったるく感じるほどです。

 ウェブのスクロールごときで「だからどうした」という話ではあるのですが、スタンダードが引き上げられてしまうと、途端に他のデバイスの相対的な価値が落ちてしまうことになり、だんだん不満すら感じるようになってしまうでしょう。

 それぐらい、破壊力があるディスプレイを搭載しているという感想を持ちました。

iOS 11のデモで、次元が1つ加えられた感覚に

 WWDC 2017の基調講演でiPad Proを紹介したプレゼンテーションは、iOS 11の話の途中に入りました。秋の新型iPhone登場直前に正式版がリリースとなるであろうiOS 11には、おそらく新型iPhone由来の機能も盛りこまれているでしょうが、iPadほど劇的に変化するわけではないだろうと思います。

 それだけに今回のレビューもiOS 11でやりたかった、という悔しさもあるのですが。

 WWDC 2017の基調講演後のハンズオンでは、iOS 11を導入したiPad Proが展示されていました。そこで気づいたことは、コンピュータを操作する上での大きな変化でした。

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iOS 11を導入したiPad Proでの、2本の手の指での操作。選択した写真をドロップするアプリへ切り替えるため、写真を押さえていない別の手を使うという操作方法です

 我々はパソコンもスマホもタブレットも、これまで1つのマウスカーソル、1本の指先を基本にして操作しており、複数の指でのタップやスワイプは、なんらかの機能性を持たせたジェスチャーという扱いでした。

 しかしiPad向けのiOS 11では、片方の手の指で操作しながら、もう片方の手の指での操作を行う仕組みが導入されていました。この感覚がとても新しく、新鮮に感じたのです。

 操作の手順上、2つの手の指を利用するという話ではありますが、iPad向けのiOS 11で初めて、2本の手を駆使して操作する前提が敷かれたのです。

 まだまだ、ドラッグ&ドロップ時の選択や、Dock内に収納されているアプリを取り出すなど、限られた場面での活用ではありますが、2つのフォーカスポイントをUIに持ち込んだのは、新しいなと振り返ることができます。

 ディスプレイの応答速度や2本の手でのオペレーションなど、これだけ成熟してきたタブレットを含むスマートデバイスにも、まだまだ新しい感覚というものが残されているのだなと、実感した経験でした。

 特に操作方法については、慣れをともなって「使いやすい」という感覚が生まれるため、多くの人にとって、すぐになじみ深いものになるとは思いませんが、AR・VRも含めて、新しいコンピュータの使い方へと、大きく移行していくタイミングに来ているのかもしれません。