経営×ソーシャル
ソーシャル グローバルトレンド
2017年7月4日
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武邑光裕 [クオン株式会社 取締役 兼 ベルリン支局長]

ベルリンのスタートアップ「N26」の快進撃にみるフィンテック革命とは?

欧州で急拡大するデジタル銀行N26発行のマスターカード。銀行発行の独自のカードはなく、このMastercard+デビットカードが銀行カードとなる

フィンテック(Fintech)革命は、2008年の金融危機から舵を切りました。職を失った金融部門の従業員はIT専門家と協力して、人々のお金の問題を解決するスタートアップを立ち上げたのです。伝統的な銀行が唯一の金融システムではなくなった今、支店もATMも所有しないデジタル銀行が快進撃を続けています。ベルリン発、欧州で急成長するモバイルアプリ・バンキング「N26」成功の秘密を探ります。

イノベーションのジレンマ×「Uberの瞬間」

保険会社Allianzと提携し、月額5.9ユーロで旅行・損害保険が付帯するN26の「ブラックカード」。従来のカード会社が審査付きで発行するプレミアムカードのステイタスとは異なるが、どちらがクールかは意見が分かれる ©N26

 今、金融の世界は根本的な変化に直面しています。1997年、ビル・ゲイツ氏は「銀行業務は必要だが、私たちが知っている銀行は容易に消えるだろう」と予言しました。

 この数年で、米国と欧州の数千の銀行支店が閉鎖されています。次の10年で数百万人の銀行員が路頭に迷うおそれがあります。他の業態と同様に、金融業界にもソーシャル化、シェア経済の大波が押し寄せています。

 デジタル技術やユーザー経験(UX)デザインの成熟により、多様な業態がモバイルデバイスを通じて、顧客の支払い環境を変化させています。Google、Apple、Facebook、AmazonなどのIT企業が、独自の顧客基盤に新たな金融サービスを提供し始めれば、取引コストは無料化され、金融サービスプロバイダは支払い業務の本流ではなくなります。

 1980年代に確立された銀行の支店業務も、今や顧客との関係構築の唯一の場所ではありません。銀行自体がスマホのアプリとなり、AIアドバイザーが顧客に最適な資産運用を提示し、リアルとオンラインの境界が曖昧となることで、従来の銀行は大きな圧力を受けています。さらにフィンテック(Fintech)の台風の目であるブロックチェーン技術は、インターネットがそうであった以上に、現行のあらゆる産業に破壊的なイノベーションを引き起こすと予測されています。

 ビットコインやイーサリアムのような投機的な新興市場に加え、何より、「イノベーションのジレンマ」を乗り越えながら、将来、ブロックチェーンが本当に伝統的な金融業界の「友人」になり得るのかに注目が集まっています。これは、金融ビジネスの仕組みの根本的な変革を意味し、もはや業界が無視することのできない技術だからです。



武邑光裕(たけむら・みつひろ)[クオン株式会社 取締役 兼 ベルリン支局長]

メディア美学者。武邑塾主幹。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学情報デザイン科、同大メディア美学研究センター所長、東京大学大学院新領域創成科学研究科、札幌市立大学デザイン学部(メディアデザイン)で教授職を歴任。2015年より現職。専門はメディア美学、デジタル・アーカイヴ情報学、創造産業論、ソーシャルメディアデザイン。著書『記憶のゆくたて デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。2015年よりクオン株式会社ベルリン支局長。2016年、取締役就任。


ソーシャル グローバルトレンド

ヨーロッパ各国から様々なクリエイターやテクノロジストが集まる街、ドイツ・ベルリン。この街を訪れると、自ずとソーシャルビジネスのグローバルトレンドを垣間見ることができます。本連載では、ベルリンに在住する著者が現地で見た、ソーシャルビジネスの最前線を紹介します。

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