僕達の代のラグビー部を率いていたのは、主将のカールというイギリス人。全英ラグビー代表チームのキャプテンをやっていたという本格的なラガーマン。映画007シリーズの6代目ジェームスボンドを演じるダニエル・クレイグのようなカールが率いる一軍は文句なしに強かった。本気でレベルの高いチームだった。

ある意味、ハーバード・ビジネススクールらしい
心意気勝負の「二軍」チーム。

 問題は、というか、面白いのは僕の所属していた二軍だった。

 二軍こそ、とんでもない奴らの集まる濃いチームだった。

 そもそもビジネススクールに来る時点で少なくても5年以上社会人をやっているわけで、体がなまっている奴、太ってしまった奴、怪我を抱えている奴。そんな「ラグビーなんて激しい競技をする体系じゃないだろ」と言われてしまいそうな奴らが二軍の主流だった。体はなまりになまっているが、めちゃくちゃ熱くて、とにかくプレイしたい。でも残念ながらそこまで機敏に体は動かない。でも一応、元はスポーツ万能。そんな元運動神経抜群の「デブ」のラグビー素人が集う二軍、そこは究極の熱い世界だった。

 たとえばゼイブはホッケーのカナダ代表キャプテンとしてオリンピックにも出場した、お国のヒーローだ。昔はさぞかし女性にもてたであろう現役時代のプロマイドを見たこともある。ただ、引退してから数年で彼は無残にもドラム缶のような体になっていた。でも、さすが恐れを知らないホッケーの鬼だ。試合では巨体を揺らしながら汗まみれドカドカで走り、相手のどでかいプレイヤーにも果敢に突っ込んでいく愛すべき「元」ヒーロー。

 二軍のキャプテンは、元グリーンベレーの「マル」。実際に戦争に行っていた軍人。で、滅茶苦茶ハートのでかい奴。マルにとってはフィールドは戦場のようなものなのであろう。ハーバードの学生とは思えないスラング満載の愛の鞭でチームメートの尻を叩く。「おまえ、○○ついてんのか!この○○野郎!走れ~!!」ただ、残念ながらマルも当時の姿からするとかなりの太り具合だ。えっさえっさ汗だくで一生懸命走りまわる。