自動運転の分野で「第二のムーアの法則」が始まろうとしている?

 スカイアラッポ氏は「5年前には、完全自動運転の実現は2030年ごろと言われていた。しかし、この1、2年でAI(人工知能)によるディープラーニングの民生利用が進むなど、新たな技術のブレークスルーが起こり、完全自動運転の量産化はもうすぐ目の前に迫っている。いままさに、第二のムーアの法則が始まる前夜だ」との認識を示した。

「ムーアの法則」の本家インテルとしては、自動運転の技術開発を自社で積極的に行うべきだと舵を大きく切ったといえる。

自動車メーカーが戦々恐々
モービルアイの今後は?

 これまでインテルと自動車産業との直接的な結びつきはそれほど目につかなかった。ムーアの法則によってインテルのビジネスを拡大させてきたのは、PCの普及が大きかった。

 自動車の半導体の主流は16ビットや32ビットのCPUで、これらを集約したシステムとして多数のマイコン(マイクロプロセッサ―、マイクロコンピューター)が搭載されている。この分野では、日本や米国の企業が先行する。

 また、近年注目が集まっている車載半導体の分野が、ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転システム)向けだ。ここでは、大手の他、自社で生産拠点を持たないファブレス企業としてイスラエルのモービルアイの躍進が目立つ。

 さらに、自動運転技術で重要となる画像認識で効果を発揮するGPU(Graphics Processing Unit)も自動運転向けプラットフォームとして脚光を浴びている。

 このように日々競争環境が厳しくなる次世代自動車ビジネスで勝負を挑むため、インテルが取った戦略がM&Aだ。

 2017年3月、インテルが先述のモービルアイを153億ドル(1ドル110円換算で、約1兆6830億円)で買収すると発表したことで、自動車産業界に激震が走った。なぜならば、モービルアイは単眼カメラによる画像認識技術で世界をリードしており、同社製品の「eyeQ」は米国やドイツ、スウェーデンなどの欧州に加え、日本でも大手自動車メーカーなどで採用されており、こうした各メーカーのビッグデータの管理がインテルに移行する可能性があるからだ。