[リヤド 21日 ロイター] - サウジアラビアの王位継承第1位となった若きプリンスは、石油依存から脱却し、最大のライバル国イランの影響力に対抗すべく強硬な外交政策を打ち出すなど、大胆な変革者として名を馳せている。

ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子兼国防相(31)は21日、父親のサルマン国王から皇太子に任命された。これにより、26歳年上でこれまで皇太子を務めていた国王のおい、ムハンマド・ビン・ナエフ氏は全職務を解任された。

すでに国防・エネルギー政策を指揮するムハンマド新皇太子は、81歳の国王に次いで、同国で最も力を持つ人物となる。

年長者が支配する家父長制が長い間しきたりであったサウジアラビアにおいて、もっと若い世代に支配のバトンを渡すという決断は、社会的・文化的な大転換を意味する。

もし新皇太子が30代で国王となるなら、近代国家で最も若い君主となる。

今回の国王令は、若い世代のサウジ国民に広く支持されているものの、多くの年配保守層からは慎重に見られている新皇太子への信任投票と言える。新皇太子は秘密主義が一般的な支配層とははっきりと一線を画しており、テレビや街頭の看板広告などで、ひげを生やした新皇太子の顔を見ないことはほとんどないほどメディアを活用している。

皇太子昇格は、超タカ派的で干渉主義の外交政策やサウジ経済の青写真といったムハンマド氏の政策を肯定するものだ。

経済面では、脱石油依存を掲げた「ビジョン2030」と銘打った大改革を発表。そのなかで、女性の経済的役割拡大や国営石油会社サウジアラムコの一部民営化など、経済の多様化を打ち出している。このような改革は、数年前では考えられなかったことだろう。

一方、新皇太子の外交政策は、地域と世界におけるサウジアラビアの役割を変えつつある。

外交官や専門家らは、イエメンで続く内戦にサウジが介入するとの決断の裏には、新皇太子が大きな原動力となったとみている。最近では、カタールとの国交断絶を巡り、湾岸諸国を主導したのも新皇太子と考えられている。

<攻撃的>

この2つの決断は、これまでの国王が支持してきた湾岸アラブ国家の合意による政策決定とは異なり、対立を辞さない外交政策を取ることを示している。イスラム教スンニ派のサウジアラビアは、シーア派のイランの影響力に対抗するため攻撃的な行動に出ている。

イエメンの内戦は、サウジが支援する失脚した政権とイランが後押しするシーア派系武装組織「フーシ派」との対立といった地域の2大大国による代理戦争と化している。

カタールは、サウジやその同盟諸国から、テロを支援しイランと親しくしているとして非難されているが、カタールはそのような嫌疑を否定している。

このように際立った外交政策転換の背景には、過去10年において、イランが中東で影響力を拡大していると、一部のタカ派的なサウジ当局者が考えていることがある。サウジが致命的だと考えるイランによる行動拡大を、オバマ前政権下の米国が目をつぶってきたとの懸念がある。

「新皇太子の台頭によって、サウジアラビアは一段と強硬な外交政策を取り、対イラン政策をさらに強化する可能性が高い」と、RBCキャピタル・マーケッツのヘリマ・クロフト氏は指摘。

「新皇太子の下、サウジアラビアはイエメンで多大な犠牲を払った戦争に加担し、湾岸協力会議(GCC)の同じメンバーであるカタールと断交するといった予想外の行動の先頭に立った。そこで重要な問題となるのは、イランの影響力への対抗策を模索するなかで、次にどのような行動に出るか、カタールとの断交は序章にすぎないのか、ということだ」とクロフト氏は語った。

<権力の座へ急浮上>

新皇太子は短期間で権力の座まで駆け上った。わずか2年ほど前までは、サウジ国内でほとんど無名の存在だったが、陰の実力者として急速に目されるようになった。

父親のサルマン氏が2015年に同国7代目の国王となると、ムハンマド氏も国内外で脚光を浴びるようになり、自身も副皇太子兼国防相に任命された。

新皇太子は、教育、保険、住宅など経済的・社会的問題に関するあらゆる政策を監督する経済・開発問題協議会(CEDA)を率いるほか、アラムコを管轄する評議会のトップを務め、国営石油企業を直接管理する初の王族メンバーとなっている。

皇太子に昇格したことで、ムハンマド氏は、これまで国王以外には見られなかったような多岐にわたる権力と影響力を有する。

サウジアラビアの経済・外交政策の新方針は、経済的野望についてメディアに語る強いイメージを築いた新皇太子と切り離せないほど密接に関係していると、多くのサウジ国民は考えている。

国外では、地域問題やエネルギー問題、サウジ経済における急速な進歩と急転換によって不安が生じている。同盟諸国はこれまで、なじみ深い国としてサウジを見ていたが、同国に予測不可能な面が出てきたからだ。

一方、国内では意見が分かれている。

年配のサウジ国民の多くは、かなり懐疑的な見方をしている。これまで実施されてきた経済改革プランは限られた成果しか残せていないと考えており、世界で最も保守的な社会の1つである同国での急速な変化に対し慎重な見方を示している。

また、新皇太子の改革は社会に不和をもたらすだけであり、いかにそれが賢明な策であろうと、サウジの官僚制度に深く根付いた問題のせいで、どのような意義ある政策も阻止されると、懸念する声もある。

その一方で、ムハンマド氏の皇太子昇格を、自分たちの世代が初めて国政で中心的立場を得た証拠だと考える若いサウジ国民の多くから、同氏の改革は称賛されている。

教育、若者、芸術、ソーシャルメディアといった問題に関するシンクタンク「ミスク財団」を同氏が設立したことは、同世代への関心の表れのように見える。

「新皇太子は若いサウジ国民に非常に人気があり、『ビジョン2030』を通して国の再建を試みる絶好の機会を得ている」と、米ライス大学ベイカー研究所の中東専門家、クリスチャン・ウルリヒセン氏は指摘する。

「成功すれば、何十年もの間、国王として君臨することになるだろう」と同氏は語った。