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スマートフォンの理想と現実

グーグルが目指すケータイの創造的破壊と実効支配
「Google+」というスマホ時代の巧妙な仕掛け

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第3回】 2011年7月27日
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 もちろん、すべてはまだ憶測の域を出ない。Googleに問いかけても、一笑に付されるだけだろう。しかし彼らはこれまでも、情報財の値付けに関して、米国の研究者たちと水面下で研究を進めていたし、消費者の行動履歴の保有にも執心していた。おそらくはそれらを価値化する見通しがあったのだろう。つまりこれは、もはや遅かれ早かれ、という話である。

 ケータイのコミュニケーションがもたらす価値の連鎖。あるいはテレビやコンテンツの使われ方といった、コミュニケーションとコンテンツの関係性。こうした、当該事業の生命線とも言える情報とその価値化を、客観データを伴いながら具体化され、価値の所在と実態が、丸裸にされる。しかもそれは当事者ではなく、Googleという〈巨大な影響力を持つ第三者〉によって行われる。

 だとすると、当該分野の事業者は、Googleによる値付けによって、自らが扱う商材の価値や、ひいてはその存在理由までをも決められてしまうことになるかもしれない。

ネットワークをも支配するGoogle

 こうしたGoogleによる〈間接的な情報流通の支配〉に向けた動きは、データそのものだけでなく、ネットワークの運用と構造にも、Googleは大きな影響を及ぼしつつある。

 現時点では固定回線の話だが、実は世界中のインターネットを流れるトラフィックの多くが、すでに映像配信によって占められているという。一昔前まではP2Pによるファイル交換が台頭していたのだが、時代はすでに変わってしまったようだ。

 この映像配信トラフィックの多くが、YouTubeによるものであることは、論を待たない。そしてYouTubeは今や完全にGoogleの一員である。このYouTubeが、世界中の通信事業者のネットワーク構成に、重大な影響を与え始めている。

 利用者が契約しているISPとYouTubeのネットワーク的な距離が遠いと、スムーズに視聴できなくなったり、バッファの読み込みに時間を要する。この状態を放置すると、顧客から「YouTubeとちゃんと接続しないISPが悪い」と文句を言われる。

 ISPとしては顧客満足を維持するため、(ネットワーク的な意味で)よりYouTubeの近くにいられるよう、回線にコストをかけざるを得ない。これはGoogleの検索やGmailのようなサービスでも同様だ。すなわちGoogleは何の手間もかけず、通信事業者側が勝手に自分たちに擦り寄ってくるような事業構造が、世界中で作られ始めている。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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