1.震災後の日米経済

 3月に勃発した東日本大震災は、日本のみならず世界経済に大きな影響を及ぼした。たとえば、7月8日に発表された6月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比+1.8万人と市場予測の10万人台を大幅に下回る結果となった。

 日本の被災地を中心に製造業のサプライチェーンが破壊された影響から、軒並み各国で4-6月期の経済指標は下振れた。

 その後、日本の景気は緩やかな回復軌道に戻っている。6月29日に発表された5月の鉱工業生産は前月比+5.7%と予想通りの大幅上昇となった。震災が勃発した3月に同▲15.5%と統計開始以来の落ち込みを記録した後、4月は同+1.6%と下げ止まっていた。

 また、6月の予測指数も同+5.3%と大幅な増産が見込まれており、5-6月は震災復旧を反映して生産が急速に回復する局面になったと見られる。

 また、生産予測指数をベースに試算すると、4-6月期の生産は3月の落ち込みにより前期比▲3.8%の大幅マイナスとなるが、7月の生産水準は4-6月期の平均を5.9%上回る計算となる。8-9月の生産が大きく落ち込むことはないだろう。

 鉱工業生産と実質GDPの連動性を勘案すると、4-6月期は2期連続のマイナス成長が避けらないが、7-9月期にはプラス成長に転じる可能性が高い。

米国の金融政策を左右する財政赤字削減策の行方<br />世界経済を揺るがす「悪性インフレ」の台頭も<br />――島本幸治・BNPパリバ証券東京支店 投資調査本部長/チーフストラテジスト

 米国の景気指標も持ち直している。7月21日にフィラデルフィア連銀が発表した7月の製造業況指数は+3.2と、大幅に悪化した前月(▲7.7)からプラスに回復した。内訳を見ると、新規受注が+0.1と前月比7.7ポイント上昇した他、雇用も+8.9と4.8ポイント上昇している。

 また、半年後の景況見通しは+23.7と前月から21.2ポイント上昇し、91年2月以後で最大の上昇幅となった。