[シンガポール 26日 ロイター] - アジア市場で債券需要が8カ月ぶりの高水準となっている。米国でインフレが依然として伸び悩み、国債利回りが頭打ちとなる中、アジア債券の相対的な高利回りが注目されている。

ANZリサーチによると、アジアでは5月、国債と社債市場へ90億ドルの資金が流入。4月の88億ドルを上回った。いずれも2016年9月以来の額だ。

BNPパリバ・アセットマネジメント(ロンドン)の上級投資ストラテジストであるダニエル・モリス氏によると、トランプ大統領の就任で財政刺激策によりインフレと経済成長が加速するとの当初の期待はすでにしぼみ、ドル相場と米国債利回りの頭を押さえている。同氏は「そのため、アジア債券の投資妙味はいっそう増している」と述べた。

米10年債利回り<US10YT=RR>は昨年12月に、2年ぶり高水準となる2.641%を付けた後で低下。前週には、トランプ大統領の当選以来となる2.103%まで押し戻された。

米連邦準備理事会(FRB)は利上げ方針やタカ派姿勢を維持しているものの、国債利回りを大幅上昇させるには至っていない。政策金利に影響されやすい5年債利回り<US5YT=RR>は前週、4週ぶり高水準の1.8%へ上昇したが、3月に付けた今年最高水準の2.148%は大幅に下回っている。

ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズ(ロンドン)のマルチアセットストラテジー部門の共同責任者、ポール・オコナー氏は「現在の超低金利政策の継続期間が、企業利益の循環的な回復基調の継続期間よりも長くなることを、投資家がいちだんと信じるようになっているという全体像は変わっていない」と述べた。このため、アジア債券は相対的に魅力的に映っているとアナリストらはみている。

<インド、韓国、マレーシアにメリット>

ANZのデータはアジア新興国債券市場のうち韓国、インド、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、中国をカバーしている。

4、5月に資金流入の多かった市場の10年国債利回りは、インド<IN10YT=RR>が約6.5%、 マレーシア<MY10YT=RR>が3.9%、韓国<KR10YT=RR>が2.13%だった。

パインブリッジ・インベストメンツ(シンガポール)のアジア債券ポートフォリオマネジャーのオマール・スリム氏は「欧州におけるテールリスク低下や、米国のインフレ期待低下とそれに伴うハト派的金融政策は、概してアジア債券の支援材料となる」と指摘。「アジアは信用リスクの評価において引き続き、相対的に良い位置にある」と述べた。

リスクは、米インフレが鈍化した場合でもFRBがタカ派的発言を貫くことだ。今年2回目の利上げを発表した後の前週、FRB関係者は利上げペースを過度に早めることより、過度な低金利を長期間維持することをより憂慮していると示唆した。

アジア債券への投資は、地域の経済成長が比較的強いことも背景にある。国際通貨基金(IMF)はアジア太平洋地域の国内総生産(GDP)成長率について、17年が5.5%、18年が5.4%と予想した。

ANZのアジア調査責任者であるKhoon Goh氏は、アセットクラス全般でアジア市場への資金流入がみられると指摘。債券需要はリスク回避が目的ではないとの見方を示した。MSCIアジア太平洋株指数(日本除く)<.MIAPJ0000PUS>は年初来で22%高となっている。

(Nichola Saminather記者 翻訳:田頭淳子 編集:吉瀬邦彦)