各種メディアでは相変わらず“脱原発”、“自然エネルギー”論議が盛んである。

 だが、多くの人がこれに白けてしまっている。そんな新聞記事は読まないという人が増えているように思う。それも、“脱原発”の方向に異論のない人たちが意外なほど多いのだ。

 なぜそうなのか、その答えは明快だ。

 未だ、災害は進行中だからである。脱原発論議より今すぐに取り組まなければならない深刻な課題があるからだ。今回の汚染牛肉問題は、現政権が足下の問題に集中的に取り組んでこなかったことを明らかにしている。

逃げ出した“猛獣”が暴れている今、
脱原発論議に没頭すべきではない

 25日に発表されたFNNの世論調査では、内閣支持率がさらに6.7%も急落したが、それは現政権の大震災対応についての強い抗議であろう。

 例えて言えば、放射性物質の飛散は、檻から猛獣が飛び出すようなこと。

 災害で檻が壊れ、多くの猛獣が逃げ出して、街や村に逃げ込んだ。これ以上猛獣が逃げ出さないように檻を補強して閉じ込めるのが「ステップ2」に移行したといわれる原発事故の収束のための対策だろう。

 しかしこれは、原発事故の被害の収束とは異なる対策だ。

 既に四方八方に逃げ出した猛獣が、人に危害を与えるのを防ぐこと。それは檻を補強することと同じくらい重要ではないか。ひょっとして、政府の発表やわれわれの予想を上回る数の猛獣が既に逃げ出しているとしたら、実に深刻だ。