あのリーマンショックの再来か?
「大西洋危機」報道に落ち込む関係者

 あのリーマンショックが再来するのではないか――。そんな不安が金融市場に本格的に広まり始めたのは、日本が夏を迎える直前の梅雨の時期だった。その不安とは、欧州や米国の深刻な財政危機がいよいよ顕在化し始めたことだ。

 「大震災後の復興需要がようやく盛り上がり始めた時期にこれでは、金融市場を長期停滞させかねない。心の中は、しばらく梅雨時の空と同じ曇天模様だった」

 ある中堅証券会社の株式アナリストは、こう打ち明ける。

 梅雨が明けて本格的な夏が到来すると共に、不安はさらに大きくなった。「ギリシャや米国の財政危機はかつてないほど深刻」「このままいくと、先進国で同時多発的にデフォルト(債務不履行)が起きるのではないか」という報道が相次いだ。

 もしもそんなことが起きれば、影響は瞬く間に金融市場へ波及し、さらには世界の実体経済をも破綻させかねない。リーマンショックを上回る混乱が起きる可能性だってある。次々に飛び出す悪材料で不安定な動きを続ける株価を眺めながら、先日新聞記事で見た「大西洋危機」という物騒な言葉が、アナリストの脳裏をかすめた。

 結論から言えば、足もとで欧米の状況は最悪の事態を免れている。ギリシャを火種とする欧州のソブリン危機は、ユーロ諸国の支援決定によって、とりあえずの決着を見た。債務残高の上限引き上げ議論に揺れる米国でも、民主党と共和党の間で一進一退の攻防が続けられてきたが、妥協が実現しそうな気配だ。

 しかし、これまでの経緯を振り返ると、問題の根はかなり深い。先行きを楽観視するには、まだ早そうだ。

 公的債務残高がGDPを上回るギリシャにおいて、財政危機不安が頂点に達し、一度目の欧州ソブリン危機を演出したのは、昨夏のことだった。ギリシャショックは、財政赤字の拡大に苦しむスペイン、ポルトガルなどのPIIGS諸国へも波及の兆しを見せた。ユーロが売り浴びせられ、世界各国の株式市場も下落した。

 当時、ユーロ圏内の連鎖デフォルトを食い止めようと、EUとIMF(国際通貨基金)がギリシャに対して1100億ユーロ、それ以外の国に対して7500億ユーロの支援を決定した。また、ECB(欧州中央銀行)と各国の中央銀行は、PIIGS諸国の国債を購入して信用力低下に歯止めをかけようと躍起になった。しかし、それは問題の「先送り」に過ぎなかった。