女性向けのカメラアプリで「知る人ぞ知る」存在の中国メーカー・Meitu(メイトゥ)。「BeautyPlus」(ビューティープラス)や「MakeupPlus」(メイクアッププラス)といった、女性の顔を美しく加工するアプリは世界中の女性たちから絶大な人気を得ています。さらには自撮りに特化したスマートフォンを展開していることでも知られています。Meituはなぜ女性をターゲットにした製品を展開しているのか、スマートフォンなどのグローバル展開をどう考えているのか。MeituのCEO、呉欣鴻(ウ・シンホン)氏に話を伺いました。

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セルフィー特化のスマホ「M8」や「T8」
日本展開や次世代モデルはどうなる?

 Meituは今から9年前、2008年に創業した若い会社です。今やアプリのダウンロード数で世界1位になるなど、最も勢いのある中国企業と言えるでしょう。しかしCEOの呉氏はいわゆるIT企業の成功者という風貌ではなく、爽やかな青年といった雰囲気を持っています。実は呉氏は元々カメラが大好きで、女性モデルの撮影などを行なっていたとのこと。その時にモデルさんたちから「撮影した写真をもっと美しく修正してほしい」という要望が多くあったそうです。そこでフォトショップなどを使わず、簡単に女性を美しくできるアプリの開発を考え、Meituを起業したとのことです。

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中国、厦門にあるMeitu本社

 Meituの事業はBeautyPlusなどのアプリとスマートフォンによるハードウェアが柱となっています。同社の売り上げを見てみると、昨年2016年は売り上げの95%をハードウェア事業が占めました。つまりMeituを支えているのはスマートフォンで、好調な結果を残しています。しかし元々アプリ開発からスタートした同社だけに、呉氏は今後ハードウェアの売り上げ比率を下げ、アプリやサービスを伸ばしていきたいと考えています。

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MeituのCEO、呉欣鴻氏

 好調なスマートフォンビジネスは、今後も販売数を伸ばすためにさまざまな挑戦を行なっています。例えば6月18日にはスマートフォン「M8」のセーラームーンバージョンを限定1万台で販売しました。このモデルは呉氏が当初考えた以上の人気となっており、今後もキャラクターを使ったコラボレーションは積極的に行なっていきたいとのこと。このM8にはハローキティーバージョンもありますし、過去のモデルではドラえもんを採用したこともあるなど、日本のキャラクターが積極的に採用されています。

 Meituのスマートフォンは女性を中心に人気があるものの、現在は中国を中心に展開されているのみ。グローバル市場へはまだ本格的な参入を果たしていません。日本のキャラクターを使っていることからも、日本でのMeituのスマートフォンの販売も期待したいもの。そこで呉氏に日本市場への取り組みを聞いてみました。

 呉氏によると、日本向けに端末を展開することは過去に検討したことがあるとのことです。しかし日本のユーザーは高スペックな製品を重視することもあり、今の同社の端末の性能ではまだ参入には不十分だそうです。つまり日本にMeituのスマートフォンを投入するのであれば、より高性能な製品を開発する必要があると考えているのです。今後、Meituからハイスペックな製品が発表されれば、それは日本など先進国もターゲットにした製品なのかもしれません。

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Meituの現行モデル以上のスペックが必要と呉氏は考える

 またMeituのスマートフォンはフロントカメラを使ったセルフィー機能を一番の売りにしており、女性ユーザーを主なターゲットにしています。今後の製品についても呉氏は基本的にその考えは変えずに、女性向けの端末を作っていくとのこと。とはいえ2月発表の「T8」と、6月発売の最新モデル「M8」にはブルーなど男性が持ってもおかしくないカラバリもありますから、男性ユーザーも意識はしているのでしょう。

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女性向けスマートフォンだが、男性が持ってもおかしくないカラバリもある

MeituはAIとともに進化していく

 では今後、Meituはどのようなスマートフォンを開発していくのでしょうか? 呉氏は1年や2年といった短期的なスパンではなく、10年先のスマートフォンの姿を考え製品開発を進めていると語ってくれました。同氏が考える10年後のスマートフォンとはどんな姿なのでしょうか? それは「さまざなデバイスに繋がり、それらをコントロールする中心的な存在であり、生活に無くてはならないもの」であると言います。そしてスマートフォン側でできないことはクラウド側ですべて処理され、そのクラウドは人間の脳により近づいた存在になっていくだろうと語りました。

 そうなると「スマートフォンというデバイスの姿は今の形ではなく、メガネ形などまったく異なっているかもしれません」(呉氏)。つまりこれからのスマートフォンは、スマートフォンの形状そのものではなく、どんなことをしてくれるデバイスになるのか、という点を重視して開発する必要があるということです。

 呉氏は今後スマートフォンの重要な核になるのはAIになると考え、AI関連の人材採用を強化しているとのこと。スマートフォンは手足の無いロボットのようなもので、人間の生活をより豊かに、そしてサポートする存在になっていきます。

 実は今のMeituのスマートフォンも、すでにAIを搭載しており、セルフィー撮影時の女性の肌の加工の最適化などに利用されています。今後AIはスマートフォンの操作を音声で行なうなど、スマートフォンを使う際に無くてはならない機能になるのです。

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将来のMeituのスマートフォンは、今とは変わった形のものになっているかもしれない

アプリとECを使って売り上げを伸ばす

 AIは同社のスマートフォンだけではなく、アプリやサービスにも今後活用していくと呉氏は説明します。カメラを通して女性の肌を解析し、美しい加工を施すだけではなく、肌の健康状態を察知したり、その状態に最適な化粧品を広告として表示するなど、AIはアプリの機能強化に加え新たなビジネスチャンスをもたらすものになります。髪型や服装のオススメを案内するなど、ファッションのアドバイスをすることも可能になるでしょう。このようにアプリから物販販売へユーザーを導くためにも、Eコマース分野へも今後積極的に展開するそうです。

 アプリ内に流す広告も、AIを使えばよりユーザーにマッチしたものを提供することが可能になります。今やスマートフォンアプリの中で表示される広告はどのアプリも似通ったものになってしまっています。広告効果を高めるためにも、AIの活用はこれから無くてはならないものになる、と呉氏は考えているのです。

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eituのスマートフォン向けアプリは女性の美を追求したものばかり

 アプリ広告から誘導されるEコマースサイトも、Meituは自社で構築しユーザーに直接製品を販売します。中国ではすでに多くのECサイトがありますが、Meituの店舗展開は単純に商品数が多いとか、価格が安い、という点を売りにはしません。ユーザーが自分自身の個性を活かせるようなアドバイスをAIが行なってくれる、そんな店舗展開を呉氏は目指しています。

 今の若い世代は右へならえ主義ではなく、個性を求めているとのこと。各個人が自分のブランディングを進め、自分のお気に入りの製品をSNSで紹介するようになれば、それ見た他のユーザーがMeituのECサイトに集まってくるという、SNS時代らしいエコシステムが構築できるわけです。

 Meituのアプリは女性にとって無くてはならないものになりました。Meituは「美」を企業の基本思想として製品やサービスを開発しています。「女性をより美しくする」というビジョンを持ったMeitu。今後登場するスマートフォンやアプリ、サービスは、他社とは一味も二味も違うものが期待できるでしょう。

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中国・厦門にあるmeituのショールーム