日本郵政、大型買収で迷走の元凶は「高株価維持」の重圧Photo by Ryosuke Shimizu

「打ち上げ花火」は、またも不発に終わった。

 日本郵政による野村不動産ホールディングスの買収交渉は、6月19日、両社がそれぞれ「交渉の白紙化」を発表した。買収額が数千億円規模になるといわれた大型案件。だが、最終的な買収価格で折り合えなかったと見られている。

 日本郵政は、全国の一等地にある郵便局を高層ビルなどに衣替えし、収益源に育てる構想を持つ。「プラウド」ブランドのマンションで知られる野村不動産のビル開発ノウハウを得るのが、買収の狙いだったとされる。だが、不動産業界では「わざわざ買収しなくても事業提携すれば済む話。別の狙いがあったように感じる」(大手幹部)との声も少なくなかった。

大型買収ありきの成長戦略
財務省からのプレッシャー

 初めから「買収ありき」だったのではないか――。そんな見方は、郵政をよく知る関係者の間でくすぶっている。

 日本郵政の大型M&A(企業合併・買収)好きは、今に始まったことではない。2008年から10年にかけて、「ペリカン便」で知られる日本通運の宅配便事業を吸収した。15年には6000億円超を投じて、オーストラリアの大手物流会社トール・ホールディングスも買収した。

 ただ、いずれも買収後は思うような成果が出ず、経営の重荷にもなっている。宅配便は、準備不足がたたって遅配を繰り返すトラブルが発生。トールは、豪経済の低迷もあって収益が思うように上がらず、日本郵政は17年3月期決算で約4000億円もの減損損失計上を余儀なくされた。