次にユウキと私が会ったとき、こんな答えが出てきました。

 ユウキ「やっぱりお金って、使うか使わないかのどっちかだと思う。だから、もし『おごってあげる』って友だちに言われたら、前もって『今度どこかに行ったときは私がお返しするからね』って伝え、その子の了解をとれば、あとから私のことを使おうとするのを避けることができそうです。そしてもう1つ。おごってもらったら、すぐに親に報告します。それでその子にお返しをするためのお小遣いをもらうようにします」

 対立が解消したあとのクラウドが図表4です。この図では、対立する2つの〈行動の箱〉がなくなっています。代わりに、2つの〈要望の箱〉を同時に満たせる解決策が右側の箱の中に書かれています。この解決策を、ユウキは自分で考えだしたのです。

 読者の皆さんの中には、この解決策が好きではない方もおられると思います。なぜなら、結局お金を出すのは親だからです。

 もしかすると、与えられたお小遣いの範囲内で、工夫しながら楽しく生活していくような解決策を期待されるかもしれません。その気持ちはよくわかります。

 しかし、心配しないでください。解決策の内容の質は、クラウドを使う練習を積めば積むほど高まっていきます。学問でも、スポーツでも、音楽でも、継続すればレベルが上がっていくのと同じことです。


 クラウドがあれば、子どもにお説教をしたり、あるべき姿を言い聞かせたりしなくてもよくなります。その代わり、子ども自身が、友だちとの関係性、親との関係性、自分にとっての幸せな毎日などを考慮して、一番よい方法を考えるようになるのです。

 相手の立場も考えられるようになりますし、自分の望みも明確にわかるようになります。その結果、創造的なアイディアを出せるようになるのです。

(毎週火曜日・金曜日に公開予定)