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JAPANなニュース 英語メディアが伝える日本

駄々っ子のようなアメリカ政界、反面教師は…日本

加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]
【第57回】 2011年8月4日
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英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週はアメリカの話です。日本を透かして見るアメリカというか、日本を反面教師にしたアメリカ報道というか。「アメリカひどいよ、日本みたいだ」という書き方に眉間にしわを寄せつつ、「それでも再生の芽は出ている」という被災地からの報告に少し救われる思いを抱いています。(gooニュース 加藤祐子)

アメリカが外国の目を気にし始めた?

 このところ、英語ニュースの中心は「アメリカは債務不履行に陥るのか?」でした。そんなことになれば、大量の米国債を保有する日本をはじめ諸外国の財政・金融にダイレクトに影響するだけでなく、信用不安の連鎖がどこまでめぐるか見当もつかない、まして円高がこれ以上進んでは……という状態だったので。こちらの英エコノミスト誌のマンガが秀逸でした。「債務上限を上げるな、赤字を減らせ、財政支出をこれ以上増やすな、増税なんかとんでもない」と血気盛んなアメリカのティーパーティー(茶会運動)が、共和党だけでなくアメリカだけでなく世界中の鼻面を引き回しているというものです。

 結果的に上下両院の両党は債務上限引き上げ・赤字削減法案に合意し、日本時間3日未明に可決。オバマ大統領の署名をもって成立。アメリカはデフォルトを回避しました。下院での法案可決には、今年1月に乱射事件で頭を撃たれたギャビー・ギフォーズ下院議員が事件後初めて党院し、法案に賛成。彼女を議員たちが満場の拍手喝采と涙で迎えるという感動的な一幕もありました。

 しかし経済的な信用不安だけでなく、「世界唯一の超大国にして世界一位の経済大国」としてのアメリカの信用は大きく揺らぎました。アメリカ人は、あるいはアメリカのメディアは、アメリカを「世界で最も偉大な国」と自画自賛するのが好きですが、今回の顛末でアメリカの評判は相当に失墜したと、米メディアも気にしています。米紙『ニューヨーク・タイムズ』では、元東京特派員で現ワシントン支局長のデビッド・サンガー記者がアメリカの信用失墜について「ダメージはすでに相当と世界は見る」という記事を掲載し、アメリカの影響力低下を予測。そして、たまたまつけていたCNNではキャスター同士が、アメリカは世界で「street cred」を失ったと嘆き合っていました。

 「street cred」とは「street credibility」の略で、この場合は「街にいる普通の人たちの信頼・評価」の意味です(「都会的でおしゃれな人たちの評判」とか解説している辞書もありますが、「都会的でおしゃれ」という意味は最近では薄れてきています)。

 アメリカ人は基本的に、外国が自分たちをどう思っているか日本人ほどは気にしない人たちだと私は思っています(ひらたく言えば、「外国メディアが伝えるAMERICAなニュース」ばかり取り上げるコラムは、彼の国ではあまり需要がないだろうなあ、と)。なので、今回のこういう反応は少し意外でした。

 法案合意が発表された8月1日にCNNが行った世論調査では、ワシントンの政治家たちが「責任ある大人として行動した」とみる回答者はわずか17%。政治家たちは「わがままな子供みたいに振る舞った」という回答は77%にもなったそうです。

 こういう状況のアメリカ政界を批判するのは当然なのですが、悲しいことに政治家たちがわがままな子供みたいにふるまい、政治駆け引きばかり繰り返し、国や国民より党利党略を優先し、そして協調も調整も譲り合いもできず、まともな政策を実施できない政治状況について、「まるで日本のようだ」という批判をあちこちで目にしました。やめてほしいなあ、そのたとえ。本当だから仕方がないですけど。

 たとえば上述した『ニューヨーク・タイムズ』記事も、債務上限をめぐるアメリカ政界のいがみあいと分断、機能不全について、「ワシントンは日本なみの政治的こう着状態に近づきつつある」と世界に思われたと書いています。

 さらに今週、日本人として最も「ああああ」と思ったのがこちらの英誌『エコノミスト』の表紙です(もっと大きい画像はこちら)。

 オバマ米大統領とメルケル独首相が(かなり妙な)和装をして、その後ろで富士山が噴火している。幕末とか明治初期の戯画にこういうキッチュな絵がよくありますが、これは決して日本や日本文化を賞賛しているわけではない。「Turning Japanese」というタイトルは「日本人に(日本に)なりつつある」という意味ですが、「欧米のリーダーシップ不在は恐ろしいし、見覚えがある」という副題で分かるように、「日本みたいに」というのは悪い意味の例えとして使われています。

 「日本みたいにならないように」「日本みたいになっちゃうよ」と欧米メディアが書き続けるのを私も何度も紹介していい加減、嫌気が差しています。ざっと見直しただけで過去に4回も、その話題でコラムを書いていました(その1
その2その3その4)。

 2009年10月のコラムで紹介した米紙『ウォールストリート・ジャーナル』記事は、見出しまで今回の『エコノミスト』とよく似た、「Is the U.S. Economy Turning Japanese?(米経済は日本のようになりつつあるのか?)」というもの。もっともこの段階ではまだ「?」がついていたのと、経済限定の話でしたが。それがこの2年間で「?」がとれて、経済から政治の話に「日本化」が進んできたのだとも言えます。「政治面でも日本みたいに?」と懸念する英メディアの様子を紹介したのは、昨年9月のことでした。

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加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]

1965年東京生まれ。小学校時代を米ニューヨークで過ごす。英オックスフォード大学修士号取得(国際関係論)。全国紙社会部と経済部、国際機関本部、CNN日本語版サイト編集者(米大統領選担当)を経て、現職。2008年米大統領選をウオッチするコラム執筆。09年4月に「ニュースな英語」コラム開始。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」。

 


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