キャリア教育と
個別支援が柱

 日本生産性本部の調査では、未就職者を出さないための就職支援策について、ほぼ全大学が「個別相談に力を入れている」と回答した(図表参照)。

 こうした取り組みに対して柳沢さんは、「一定の成果を上げていると思います」と評価する。個別支援については、「過多とも言えるくらい情報が溢れているなかで、学生自身が自分に合った、あるいは自分が求められるフィールドを選択するのは非常に難しい。就職市場や企業のニーズをよく知るキャリアカウンセラーなどによるコンサルティングは、学生が視野を広げて現実を見つめるためのサポートの役割を果たすと期待できます」。

 就職先の積極的な開拓やセミナー、説明会を行う大学も多い。これらとは別に、1~2年次といった早期からキャリア教育を実施する大学も増えた。自分の将来や社会の仕組みに目を向け、就職に向けた関心や意欲を喚起するものだ。

 授業・講義に、キャリア教育の要素を取り入れる大学も増えてきた。ファシリテーター型の講義や少人数のゼミナールを低学年のうちから受講して、主体的な学びの習慣をつけたりするものだ。「学生自身が、興味や気づきを主体的な行動に移していくのが大学での学びであり、これをフォローするのが大学の役割です。協調性には優れているものの、自分から動き出すことに慣れていない最近の学生に対して、カリキュラムや授業・講義の方法が変化を迫られている面もあります。キャリア教育に対して、教員も意識を変え、協力して取り組んでいる大学ほど、よりよい成果を上げているのではないでしょうか」。

大学選びに社会人の
視点も生かして

 これからの大学選びでは、就職動向にも注意する必要がありそうだ。「卒業生の就職先情報を詳しく公開する大学も少なくありません。大手にどれだけ多く就職しているかも気になるところでしょうが、多様な就職先があるかどうかに注目していただきたいところです」と、柳沢さん。大学側の求人開拓力とともに、学生側の視野が開かれているかどうかがわかるからだ。どのような就職サポートが用意されているか、学生自身の主体的な取り組みを促すカリキュラムが充実しているかといった点も確認しておきたい。

 保護者向けの説明の機会を設けているかどうかも見逃せない。「親は、社会人の先輩として頼りになる最も身近な存在だと思います。就職市場動向などの最新事情を共有し、協力態勢で臨むことは、学生にとって大きな力になるはずです」。もちろん、大学選びの段階でも親のサポートは重要だ。社会への入り口としてわが子にふさわしい大学か。ベテラン社会人の目を生かして、子どもとともに見極めていきたいものだ。