ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第56回は、経営思想家ランキングThinkers 50にも選出され、人材教育の第一人者であるリズ・ワイズマンによるルーキー・スマートを紹介する。

「新人だから」と期待を下げない

 思いも寄らない方法でベテランよりも成果を上げ、良い意味で周りの期待を裏切る新人を目にしたことはないだろうか。もしくは、かつて自分が新人だった時に、そのような成果を上げたことはないだろうか。新人が経験なしに成果を上げられるのは、けっして「運がいい」からではない。そこには、新人ならではの思考と行動があるからだという。

 本書は、経営思想家ランキングThinkers 50にも選出され、人材教育の第一人者であるリズ・ワイズマンが、人がはじめて経験する課題に取り組む時、つまりルーキーの時によく示す行動・思考にはパターンがあることを明かし、ルーキーの活用や、ベテランがルーキーのパワーを再び手に入れる方法について述べた1冊である。若手を育てる立場にある人に役立つことはもちろん、仕事に慣れてきたビジネスパーソンが、再び自らを成長させるきっかけにもなり、人と組織の成長に役立つ内容となっている。

 本書が明らかにした興味深い点は、「ルーキーの行動は、一般のイメージどおりではない」ということである。ルーキーは、ベテランに比べて他人の言葉によく耳を傾け、他の人によく助けを求める。また、多くのことを学ばなくてはならないという自覚があるので学習のペースが速い。それに対して、ベテランはルーキーより政治的判断に長けていて、直感に頼り、過去と同じ行動をとる傾向が強いという。ルーキーは経験が乏しがゆえに、他人の言葉に耳を貸し、新しい情報に対してもオープンな態度をとるという。

 そのため、ルーキーとベテランの成功の仕方には違いが出てくる。高いパフォーマンスを示すベテランは、素早く行動し、資源の分配を決め、シンプルな解決策を見つけ、一貫した行動をとり、適切な課題を選ぶことを重んじる。それに対し、高いパフォーマンスを示すルーキーは、他の人の知識とスキルを上手に活用し、点と点を結び付けてものを考え、失敗しながら学び、少しずつ前に進むことを重んじるのだという。