経営の効率化を図るために、企業はしばしばダウンサイジングを断行する。しかし、その施策は本当に有効なのだろうか。筆者らの調査によると、むしろ経営破綻のリスクを高めるという結果が導かれた。


 2008年の「リーマンショック」以降、世界中の企業が労働力を削減した。米国企業だけでも、2008年末から2010年半ばにかけて解雇した労働者の数は800万人を超す

 また、今日のように財務状態が比較的健全なときでさえ、企業はしばしばダウンサイジングを行う。コストを抑え、構造調整を行い、より無駄のない効率的な職場を作る手段と見なされているためである。

 これほど普及しているにもかかわらず、このダウンサイジングという一般的な組織的慣行の有効性となると、研究者および経営者の間にいまなお統一した見解はない。我々が今回、この論争に提示する新たな研究は、実は、ダウンサイジングが倒産の可能性を高めるおそれがあることを示している。

 支持派に言わせれば、ダウンサイジングは業績と売上げの向上などの恩恵をもたらす効果的な戦略である。一方の反対派は、業績や生産性の悪化、顧客満足度の低下、残された従業員への負の影響(ストレスの増大など)など、ダウンサイジングが招くマイナスの結果を指摘する。

 そうした論争を横目に、有名企業はダウンサイジングを続けている。最近でも、ファッションブランドのヴィクトリアズ・シークレットや住宅リフォーム・生活家電チェーンのロウズ、食品・飲料会社のペプシコなどが、規模縮小を発表したり、実行したりしている。

 オーバーン大学とベイラー大学、テネシー大学チャタヌーガ校より集まった我々の研究チームは、米国を拠点とする大企業において、ダウンサイジングが招いた結果について理解を深めようと試みた。我々は、『ジャーナル・オブ・ビジネス・リサーチ』誌に最近掲載された研究のなかで、ダウンサイジングは多数の問題の誘因となり、倒産の可能性を最終的に高めるおそれがあるという理論を検証した。

「多数の問題」には、次のようなものが含まれる。「ダウンサイジングを断行した企業は、従業員を解雇することで貴重な知識を失う」「残された従業員は、増えた労働負担に対処することに追われ、新たなスキルを学ぶ時間がほとんどなくなる」「残された従業員は、経営陣への信頼を失い、エンゲージメントとロイヤルティの低下を招く」。その結果、イノベーションの減少といった長期的な影響をもたらすおそれがあるが、これは短期的な財務指標には表れない。

 こうした影響は、企業が倒産する可能性を高めるのだろうか。我々は調査を試みた。