このアンチテーゼとして登場したのがクチコミ型サイトです。クチコミ型サイトは、ガイド型グルメサイトとは全く逆に、ユーザーが自由に評価や感想を投稿し、ユーザー間で共有するサービスとして誕生しました。これはまさに、「飲食店の言いたい放題」になっていたガイド型と全く逆の構造です。

 このクチコミ型サイトは、実際にお店に足を運んだユーザーの生の感想を知ることができるわけですから、ユーザーにとって最も信頼のできるグルメサービスと言えます。結果として、ユーザーから絶大な支持を得て、食べログは今では日本で最も影響力のあるグルメサイトと言われるようになりました。

 このサービスには、お店にとっては「お客様の本音」を知ることができるというメリットもあるのですが、トラブルも少なくありません。

 来店時のちょっとした行き違いやお客様の主観や思い込みでネガティブなコメントが書かれることも少なくなく、お店からすれば欠席裁判をやられているような気分になる方も少なくないでしょう。

 クチコミ型サイトに書かれたコメントを読んで、
「そこじゃなくて、もっとここを見てほしかったな……」
「料理についてコメントするなら、この料理を食べてから書いてほしかったな……」
という複雑な気分を、飲食店関係者ならば一度ならず味わった経験があるのではないでしょうか。

 クチコミ型サイトの場合は、ユーザーの利益を追求した結果として、見方によっては飲食店の営業妨害にすらなりかねない部分もあり、ときには飲食店の命運を左右するほどの影響力を及ぼしてしまう場合もあります。

 このように、従来のグルメサイトには、「ガイド型」「クチコミ型」それぞれのタイプごとにメリット・デメリットがあり、いまだ飲食店にとって「理想形」と言えるものは登場しないといえるでしょう。

変化したグルメサイトの役割

 さらに、飲食店やお客様がグルメサイトに求める機能や役割も、年々変わってきています。

 ここ最近の外食産業における業態のトレンドを見ると、明らかに「ニッチ化」「専門店化」が進んでいることがわかります。焼肉業態を例に取ると、従来なら「高級焼肉」「カジュアル焼肉」というくらいの分類しかなかったわけですが、今では「赤身焼肉」や「尾崎牛(宮崎の有名なブランド牛)焼肉」、あるいは「立ち食い焼肉」「馬肉」など、差別化がどんどん進んでいます。

 これら個性の強い業態はお客様を選ぶのですが、はまる人は徹底してはまるという中毒性の高さやオンリーワンの魅力を持っています。激化する外食産業の中で生き残るため飲食店は差別化を進めており、その結果として個性の強い業態が次々に生まれたのです。

 一方で、お客様の嗜好や行動も変化しています。たとえば、会社の人たちと飲みに行くとき、ひと昔前なら「飲みに行こう!」という目的で企画されることがほとんどでした。飲みに行くこと自体が目的だったのです。だから、極論すればお店はどこでもよく、その結果、「総合居酒屋」がもてはやされた時代が長く続きました。なぜなら、総合居酒屋にはありとあらゆるお料理やお酒が揃っていて、どんな人でも自分好みのお料理を見つけることができたからです。

 しかし近年は、お店に行く目的が変わってきました。みなさんも、外食するときに「飲みに行こう」ではなく、
「夏牡蠣を食べに行こう」
「熟成肉を食べに行こう」
「美味しい日本酒を飲みに行こう」
と、変わってきたのではないでしょうか。

 つまり、そのときどきの気分や食欲、そして嗜好にあわせて、明確かつ具体的な目的意識を持ってお店選びをするようになっているのです。ニッチ化と専門化は、お客様の側でも起きているというわけです。

 こうして外食産業では、ニッチな飲食店とニッチなお客様を結びつけるグルメサイトへのニーズが年々高まりつつあります。ユーザーも「自分の嗜好に合うお店を見つけたい」という、こだわりのあるお店探しをできるサービスを求めるようになってきました。

 これからのグルメサイトは、そんな専門化やニッチ化に対応できるようなサービスがもてはやされていくことになるでしょう。

 そうした次世代のグルメサイトの1つとして私が注目しているのが、これからご紹介する『ヒトサラ』です。

飲食店もお客も満足する、<br />ありそうでなかったグルメサイト