顧客企業の余剰人員を受け入れ
専門分野のプロに育てる

 BPOセンターの社員には「受託した業務を淡々とこなせばいい」という意識はないという。「顧客企業のメンバーの一員という意識が強く、当社社員はお客さまと同じ目線で業務の改善に励み、お客さまにフィードバックしています。それが熊本品質というお客さまからの高い評価につながっているのです」。

 社員が意欲的に働く背景には、BBSの「正社員として採用し2年でプロに育てる」という強い意志がある。

ビジネスブレイン太田昭和の熊本にあるBPOセンター

「短時間の人も正社員として採用しています。働き方の多様化に対応するためサテライトオフィスを作ったり、士業を目指すキャリアパスも用意しています」

「High Value BPO」の範囲は広く、顧客企業が希望すれば、業務の大半を委託することができる。ある企業では大半のバックオフィス業務をBPOに出してしまい、各業務を担当する社員が一人ずつしか置かないう極限のスリム化を実現した。その時「BPOを導入したことにより生じる余剰人員の処遇の問題」が起こる。

「定型業務を長年担当してきた人は、確かにBPOに仕事を奪われます。その場合の選択肢は3つ、退職する、新しい仕事を覚える、そしてBPOセンターに出向あるいは転籍する。ある会社で給与計算ばかり担当してきた人を受け入れたことがあります。一見給与計算のプロのようですが、自社以外の経験がない。ところが当社では製造業、流通業など多種多様な企業のあらゆる給与計算を担当しなければならず、本当の給与計算のプロになりました」

 業務をBPOに移管させると、顧客企業ではそれらの実務経験を積むことが困難になるため、BPOセンターでは顧客企業の若手社員の研修も請け負っている。自社と他社の業務を経験させてスキルを身に付けさせて顧客企業へ戻すわけだ。

 このようにBPOを利用すると、企業のほとんどの業務を委託することができる。専門的で高度な業務にとどまらず、社員寮や駐車場の管理まで要望があれば応える。そのため業務を取り上げられる顧客企業の管理職が抵抗勢力になることもある。BPOを活用した働き方改革を実現するためには、経営者の強い意志が不可欠である一方、BPOを実施した後の顧客(担当者も含む)とBPOとの関係も相互理解していくプロセスも重要といえよう。