未訳の最新ビジネス洋書のエッセンスが詰まった書評レポートを、PDFファイルで閲覧・ダウンロード提供する本連載。今回取り上げるのは、『ポジティブな逸脱がもたらすパワー』です。(書評レポート提供/エグゼクティブブックサマリー

“ポジティブな逸脱者”とは、<br />どのような人物を指すのか?<br />『ポジティブな逸脱がもたらすパワー~常識やぶりの革新者はいかにして世界の超難題を解決するのか』

“非常識”ではない、
常識にとらわれない思考とは

 昨今、世の中ではビジネスに限らず、常識にとらわれない思考が良き結果を生み出すことを紹介しているケースが多々あります。

 もちろん、常識を持つことの重要性を軽視し、ないがしろにすれば、自らの社会生活を困難にし、単なる非常識な人物と見なされるでしょう。社会やビジネスそのものが良い方向に向くような問題解決力を発揮して初めて、「非常識さ」は際立ちます。

 この問題解決力を伴った「非常識さ」が本書の核となる部分であり、社会規範に例外をもたらす人間、「ポジティブな逸脱者」に通ずるものであると言えるでしょう。更にいえば、ポジティブシンキングやプラス思考という、ポピュラーでなじみ深いな思考法の表現を超えたもの、それこそがポジティブな逸脱であると言えます。

 また、このポジティブな逸脱とは、それを実践する人物の思考モデルをシステム化したものです。そしてこの問題解決システムは、多くの事例とともに、すでに社会に浸透しつつある重要なモデルなのです。

 著者、リチャード・パスカルをはじめとするグループは、社会で行動にポジティブな変化を起こすツールとして「ポジティブな逸脱」アプリケーションを開発し、社会事象における問題を解決すべく為、専門的に研究チームをつくり、リードしてきました。

 また、共同著者のモニーク・スターニンは、「ポジティブな逸脱」のグループパートナーであり、現在はタフツ大学で「ポジティブな逸脱学会」を率いています。

 このように、すでに米国では、学会としての大きな動きがありますが、この「ポジティブな逸脱」で最も有名な実例として、本書では、貧しいベトナムの村での実践結果を紹介しています。これは、子どもたちが栄養失調で死にかけていたひどい状況を好転させるために、ジェリー・スターニンと彼の妻モニークがどのようにシステムを使い、良き結果へと導いていったかという物語です。

 ベトナム政府によって与えられた期間は6ヵ月。本書では、その間の根本の原因究明から、実際に結果を出し、生活習慣として根付かせるまでの一連のシステムを分かりやすく解説し、「ポジティブな逸脱」の習慣定着までの4段階ステップを、実例とともに詳しく述べています。

 システム導入後の変化における均衡性、兆候、予期せぬ結果などに対するあらゆる解決策を事細かに知ることができる本書は、社会の力に圧倒されている人や、コミュニティーの問題を解決しようとしている人に、お勧めする一冊です。

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