長引く景気低迷に加え、東日本大震災による直接・間接的被害、さらには原発事故に端を発した電力供給の逼迫で、多くの企業が体力を奪われている。そうした現状は、企業の最も重要な資源である“人材”の育成にも暗い影を落としている。以下では、人材育成の重要な手段である「研修・セミナー」を含むOFF-JTに焦点を当て、現状と今後を探る。

 厚生労働省が今年2月に発表した「平成22年度能力開発基本調査」に、興味深い結果が出ている。企業が正社員に対して行ったOFF-JTについて聞いたところ、「実施した」という企業の比率は67.1%で、2008年度の77.0%から09年度の68.5%を含めて連続で減少していることがわかった。これは正社員以外についても同様で、こちらも連続で減少して31.4%となっている。

 この結果は、企業がOFF-JTや自己啓発支援に支出した金額にも表れている。従業員一人当たりの平均支出額は1.3万円で、08年度の2.5万円から半減した09年度と同じ水準にとどまっている。

 従業員の側から見た場合も、同様の結果が出ており、OFF-JTを受講した人数は、大幅に減少した前年度からそれほど回復していない(図1)。

図1 OFF-JTを受講した労働者(総数) 出典:厚生労働省「平成22年度能力開発基本調査

企業の取り組みが
後退している背景

 OFF-JTとは、従業員が通常の業務から離れて社外などでトレーニングを受けることを指す。具体的には、外部講師による研修やセミナーなどが該当する。

 従来、日本企業の人材育成では、実際の業務のなかで上司などが現場で訓練を施すOJT(On the Job Training)が主流だった。しかし、OJTは長期の雇用を暗黙の前提としていたため、終身雇用が崩れ、非正規社員が増えるなど雇用が流動化するなかで、「OJTが機能しない」という声が聞かれるようになった。そこで数年前から多くの企業がOFF-JTへの本格的な取り組みを始めていた。