[東京 7日 ロイター] - 日銀は7日、「伝家の宝刀」を抜き、0.1%を超える長期金利上昇を阻止する意向を鮮明にした。足元の金利上昇について、日銀では米欧金利の上昇が背景とみているが、先行き不透明感は強く、この動きが一過性かどうか、即断はしていないもようだ。

この日のオペを受け、外為市場では円安が進んだが、円安だけに依存した物価上昇は継続性に懸念もつきまとう。日銀は引き続き、市場動向を丹念にチェックしていく方針だ。

市場では、日銀の国債買入増額だけを予想する声も多かったが、日銀は強い金利抑制効果が期待できる「指し値」オペも合わせて実施。金融市場局は「足元、長期金利が大きく上昇していることを踏まえ、10年物国債金利の操作目標をゼロ%程度とする金融市場調節方針をしっかりと実現するよう実施した」と説明した。

指し値オペは、今年2月以来。日銀内には当時と比べ、長期金利のボラティリティは低いとの声もあったが、2月は指し値オペを決断するまでの「時間的経過」の中で、長期金利の上昇幅が拡大。

今回は、その時の「経験」を踏まえ、市場の変動幅を最小限にとどめることを優先し、ダブル実施に踏み切ったとみられる。

ただ、指し値オペの水準が、前回と同じ0.110%だったため、市場では「0.110%が日銀の防衛ライン」(大手銀関係者)との認識が固まった。

その点に関し、日銀は公式には全く情報を発信していないが、ピンポイントで防御線を構築したと市場から見られることに対し、その長所と短所を水面下で分析しているもようだ。

<米欧金利の上昇、背景に景気回復機運>

日銀は、今回の金利上昇の背景には、米欧金利の上昇があり、米欧経済を含む世界経済の緩やかな拡大の動きが、金利上昇の基本的なエンジンになっているとみている。

しかし、米長期金利は昨年11月のトランプ氏の米大統領選出後に急上昇した後、低下傾向にあったことから、直近の上昇が目立ってみえると分析する声も、日銀内にはある。

その分析が正しければ、足元の米欧金利の上昇は一過性である可能性が高くなり、日本の長期金利への波及力もいずれ、低下していく公算が大きくなる。

他方、米欧経済が拡大を続け、米長期金利が緩やかに2.5%を超えて行くようなら、日本の長期金利への上昇圧力も、予想外に継続する可能性もある。どちらのシナリオの実現可能性が高いのか、現状では見極めが難しく、日銀は市場動向を注意深くウオッチしていく方針だ。

この点に関連し、元日銀審議委員の白井さゆり・慶大教授は、ロイターのインタビューの中で「現在の長期金利上昇は、欧米金利につれた動き。日銀は上昇抑制に買い入れ額を増額する可能性があるが、金融機関の国債需要は強く、大きな増額は不要」との見方を示した。

<日銀オペと円安の関係>

一方、今回の日銀オペに、外為市場は円安で反応した。米欧と日本の金融政策の方向性の違いがくっきりと浮かび上がり、円安方向にゆっくりと向かうとの見方が増えた。

円安は輸入物価の上昇や、国内企業の増益要因となって、企業マインドや個人の消費マインドにプラスとなる。その結果、物価上昇率を加速させる力が強まるとみられている。

ただ、日銀内には、国内景気の拡大モメンタム全体が強くなる方向で、物価が上がることに期待を寄せており、円安による輸入物価の上昇など狭い範囲の要因に依存した場合、物価上昇の継続力に疑問符が付きかねないとの声もある。

日銀は、長期金利や為替動向など市場変動の先行きを丹念にチェックして行く方針だ。

(伊藤純夫、竹本能文 編集:田巻一彦)