「一流」になるために磨くべき、「人間関係」・「仕事」・「運」・「お金」・「自由」・「生き方」とは。映画監督、ライフスタイル・プロデューサー、生活探検家と、幅広く活躍する浜野安宏(はまの・やすひろ)氏による「提言」を、書籍『一流の磨き方』より、一部、抜粋して紹介する。「本物」を知る人だけが、本物になれる!

失敗は成功へのステップであり、
失敗しない人間に成功は訪れない

失敗を恐れる40代と、恐れない40代は、何が違うのか?

 失敗とは「学びの経験」です。
 失敗を受け入れ、そこから学ぶ。そして、失敗から得た知恵を次に活かす。

 失敗は成功へのステップであり、失敗しない人間に成功は訪れません。

 私は「積極的試行錯誤のススメ」と言っていますが、若いうちに、できるだけ試行錯誤を繰り返したほうがいいと考えています。

「試行錯誤して失敗したらどうなるのか」と考えているうちは、試行錯誤はできません。「あれだけのことをやったのだから、大丈夫」と実感できる体験をしておくべきです。

 40歳を「不惑(ふわく)」と言いますが、私の実感として、40歳は、まだ迷う年齢です。不惑は「50代に入ってから」だと思います。

 50歳のときに「自分のやることはこれだ!」と決めるためにも、45歳くらいまでは、失敗を怖れずに、たくさん試行錯誤をしておきましょう。

 一流は山のような「失敗」によって磨き抜かれて輝きます。

 私はよく、「浜野さんは、たくさんのプロジェクトを成功させていますね」と言われますがそんなことはありません。
 実現しなかったプロジェクトのほうが、はるかに多いのです。

 また、「浜野さんなら、何もしなくても仕事が舞い込んできますよね」と聞かれることもありますが、そんなことはありません。
 今でも懲りずにプレゼンテーションをしています。

 しかも、プレゼンテーションの成功率は高くはなく、30カ所にプレゼンテーションをして、ひとつ通ればいいほうです。
 プレゼンテーションで通っても、途中でプロジェクトが頓挫、立ち消えることも多々あります。

 私は大学時代に会社をつくり、今日まで、約50年間、プレゼンテーションと説得ばかり続けてきた気がします。
 このままだと、来世まで説得を続けているかもしれません。

 元来、私はオセッカイですから、デザインでも、ライフスタイルでも、自然環境でも、不満を感じたら、しゃしゃり出ます。その割には、実現できたことはわずかです。
 バブル崩壊後、進んでいた17のプロジェクトが、すべて立ち消えになったこともありました。

 コンペで首席を勝ち得た事業計画も、すべてゼロ。ハワイのアラモアナセンターの裏にあたる「ケアモク・スーパーブロック」は、すばらしいコンプレックス開発(複合施設の開発)ができたはずですが、今ではウォルマートになってしまい、ホノルルに行くたびに、残念に思います。

 パリでも、アラスカでも、カリフォルニアでも、ワイオミングでも、上海でも、香港でも、会社をつくったことがあります。
 いずれの場合も想いばかりが先走って、自分の経営力、言葉の表現力に限界を感じては引き、また夢を見ることを続けてきました。

 結果的に「実現しなかったプロジェクト」は星の数ほどありますが、それでも私は自分が「失敗した」とは思っていません。

 想いが先走っているとはいえ、思いつきだけでプレゼンテーションしているわけではないからです。

 私たちは、「フィジビリティ・スタディ(feasibility study/プロジェクトの実現可能性を事前に調査・検討すること)」を堅実に行い、「事業として十分に成立する」という判断のうえでプロジェクトの提案をしています。

 ですから、プレゼンテーションが通らなくても、それは「相手が乗ってこなかった」「ファンドが集まらなかった」だけのこと。

 私は、「失敗した」のではなく、「たまたま実現しなかっただけ」と解釈しています。

 「危ない」「心配だ」と、何もしないでぬるま湯に浸かっていると、一生、白けっぱなしで終わってしまいます。

 だから、とにかく、やってみる。「こうしたい」という強いヴィジョンがあるのなら…、怖れずに声に出してみる。何度失敗しても、実現するまで積極的に試行錯誤する。

 山のような失敗の中にだけ、一粒の大きな成果が残るのだと私は思います。

 大量の失敗を覚悟の上で、それでもやってみる。
「やってみて、失敗して、やり方を変えてやってみて……」の繰り返しの中でしか、実現できないことがあるのです。