Pei Li and Adam Jourdan

[北京/上海 3日 ロイター] - 中国政府が新たに進めるインターネット上のコンテンツに対する広範な取締りは、映像制作者やブロガー、メディア、教育者といったさまざまなコミュニティーを震え上がらせ、政府の規制強化によって自身サイトが閉鎖されるのではないかとの懸念が高まっている。

ここ数カ月、中国当局は有名人のゴシップを扱う複数のサイトを閉鎖。ユーザーが投稿できる動画内容を制限し、オンラインストリーミングを停止させた。いずれも「内容が不適切」という理由だ。

先月30日にはある政府系の業界団体が、新たな規制リストを回覧させた。映画、短編映画、ドキュメンタリー、スポーツ、教材、アニメなど、インターネットに投稿されたすべての視聴覚コンテンツについて、「社会主義の本質的価値」を遵守しているかどうか、少なくとも2人の「監査人」によってチェックすることが突然義務付けられたのだ。

600以上の会員を抱えるこの業界団体「中国ネットキャスティング・サービス協会」によれば、不適切と見なされるトピックスには、薬物中毒や同性愛も含まれるという。

この動きに対して、ネットユーザーから週末にかけて多くの批判が寄せられた。大半が、これは時代に逆行しており、創造力を阻害するというものだ。このルールの施行は不可能に近いとの声も上がった。

政府の運営する中国社会科学院でセクシュアリティを研究する李銀河氏は、「こうした検閲ルールの下では何も作れなくなる。視聴覚芸術の創造を諦めることになる」とネットに投稿した。

李氏によれば、今回の政府規則に従えば、たとえばジョルジュ・ビゼーのオペラ「カルメン」やシェークスピアの「オセロ」といった作品も厳密には禁止されるという。売春の描写や露骨な愛情表現が含まれるからだ。

このルールは、「ウェイボ(微博)」などの巨大ソーシャルメディアだけでなく、中国の活力みなぎる創造的なオンライン空間で成功を収めてきた小規模プラットホームにも影響を与える。習近平国家主席の一層の権力強化が見込まれる、今年後半に予定される中国共産党大会に向けた監視強化における最新の試みだ。

IHSマークイットの2016年データによれば、広告やコンテンツ購入からの収入を含めた中国のオンラインビデオ市場は、2015年から2020年にかけて4倍以上に拡大し、962億元(約1.6兆円)規模になると予想されている。

「かつては、さみだれ式の規制を、ゆでられるカエルにたとえていたものだが、今や、熱湯にいきなり突っ込まれるようなやり方だ」。ネットで有名になった俳優の代理人を務める芸能エージェントWang Xiaoxiao氏はロイターに語った。

ジェンダー問題に関する教育専門サイト「Yummy」の創設者Zhao Jing氏は、検閲を招くようなキーワードを回避するため、性器に言及する際には婉曲表現を用い、行きずりの関係や不倫といった禁止対象テーマを避けると話す。

そうした対策を取らなければ、彼女のサイトはテンセント(騰訊)が提供するチャットアプリの「微信(WeChat)」を利用できなくなる可能性があるという。

<標的となる娯楽>

創造的なコンテンツに対する検閲は中国では目新しい動きではない。とはいえ、規制にはグレーゾーンが伴っていたため、インターネットは一般的に規制の緩い領域だった。

だが、習主席が規制の厳格化を昨年求めて以来、よりピリピリした雰囲気になってきた。

中国のインターネット監督当局は6月、ネット検索大手の百度(バイドゥ)<BIDU.O>やネットサービス大手のテンセント<0700.HK>などに対し、有名人のゴシップを扱う60の人気ソーシャルメディア・アカウントを停止するよう命じた。その中には、「中国ナンバーワンのパパラッチ」と称され、700万人以上のフォロワーを擁するZhuo Wei氏なども含まれていた。

これは「健全で希望に満ちた本流メディア環境を作り上げ、社会主義の本質的価値を積極的に拡散する」ことを狙ったものだと政府側は説明している。

政治や報道において、すでに確立した政府管理が他分野に拡大し、ネット上のエンターテインメントに力がそそがれているのは、主として若年層ユーザーを意識した動きだと、北京で活動するメディア研究者で、検閲に批判的なことで知られるQiao Mu氏は指摘する。

「これはイデオロギーへの回帰だ」とQiao氏は電話インタビューで語った。「党としては、エンターテインメントによって人々は革命的精神を失ってしまう(と考えている)」

こうした政府の動きのなかで、ネットユーザーからの嘲笑を浴びているのが、禁止テーマのリストに同性愛が含まれている点だ。主要都市では頻繁に同性愛者の集まる状況が見られるにもかかわらず、中国が長年にわたって同性愛に対し保守的な姿勢をとり続けていることを裏付けている。

ロイターがインタビューした映像制作者2人は、最近の規制によって、自由な創造的作品のために残されていたチャンネルの1つが閉鎖されてしまったと語る。すでに映画館やテレビで放映される映画については、発表前に徹底的な検閲を受けることになっている。

「映像制作者の多くは、自分の作品が映画館での上映許可を得ることは決してないだろうと分かっている。だからネットに流している」。同性愛の権利向上を求める活動家で映画監督のFan Popo氏は語る。

こうした映像制作者にとって残された望みは、検閲官たちが新たなルールの執行に手を焼くことだ、とFan氏は言う。

規制強化を実感しているのは、中国の大手インターネット企業も同じだ。中国版ツイッターの運営企業であるウェイボの株価は、6月半ばに同社の視聴覚コンテンツに対する規制が課されて以来、約10%下落。微博は先週、「本流」の理念を推進するため、国営メディアと緊密に協力していくと述べている。

一部のプラットホームでは、不確実性を嫌った投資家の撤退や広告出稿企業の離脱が見られた、と業界関係者はロイターに語る。

辛辣な批評で人気の高い映画評論サイト「Dushe Dianying(毒舌映画の意)」は先月。「社会主義的な価値観」を掲げる監督当局により「微信(WeChat)」のアカウントを停止された。

独メディアグループ、バーテルスマンの出資を受けている同サイトの時価総額は、昨年には3億元と評価されている。

同サイトの運営に詳しい関係者によれば、提携事業と広告契約の一部が打撃を受けている。また、他の業界関係者によれば、投資にも影響が出ているという。「今はあまりにもリスクが大きくなっている」とこの関係者は匿名で語った。

(翻訳:エァクレーレン)