新刊『心に届く話し方 65のルール』では、元NHKアナウンサー・松本和也が、話し方・聞き方に悩むふつうの方々に向けて、放送現場で培ってきた「伝わるノウハウ」を細かくかみ砕いて解説しています。
今回の連載で著者がお伝えするのは、「自分をよく見せることを第一に考える話し方」ではなく、「聞いている人にとっての心地よさを第一に考える」話し方です。本連載では、一部抜粋して紹介していきます。

声を出すイメージは、相手に向かって<br />ボールを軽く投げるように

相手に声と気持ちを届けよう

 実に論理的で、非常に整ったことばや文章で話しているのに聞いているとなんだか伝わってこないという人っていますよね。私の印象では、そんな傾向のある人は自分では「自分の声が悪いから」「滑舌が悪いから」と思い込んでいることが多いようです。

 ところが私には、そう感じさせてしまう原因は「相手に声と気持ちを届けよう」という気持ちが弱いことにあるような気がしてなりません。相手と4~5メートル離れているのに、声が相手に届く前に、途中でぽとんと落ちてしまっているような感じなのです。どうすればいいのでしょうか?

 私の場合、こんなイメージで話すようにしています。これから話す内容(メッセージ)が手元に持っているボールに込められているとしましょう。近くに相手がいるときは、そのボールをどう相手に投げますか? きっとそれほど力を入れず軽く投げますよね。投げ方も体全体を使わず、どちらかというと手先だけ、手首のスナップだけで投げるかもしれません。そこから相手がだんだん離れていくにつれ、投げ方はゆったりと体を大きく使っていくでしょう。ボールを投げる方向も、相手が遠くに行くほど上向きに、斜め45度に近くなっていく感じになると思います。また、距離感を間違えて、それほど遠くにいない人にやたらと力を入れて投げてしまうと、相手のはるか上をボールが通過して捕ることができなくなります。離れている相手に話すときのイメージもこれと全く同じです。