米国の出口戦略は「不完全雇用率」を見れば頓挫する可能性は低い

 米国の物価上昇(インフレ率)の足取りが鈍い。

 直近5月分の消費者物価指数(CPI食料・エネルギー除くコアの総合指数)は前年比+1.7%と、2015年5月以来の低インフレとなった(図表1参照)。米国準備制度理事会(FRB)が掲げる「物価の安定(前年比2%インフレ)」目標の対象とする「PCEデフレータ」も、4月分がコア(食料・エネルギー除く総合)で同1.5%となり、目標である「2%」を下回った。

◆図表1:鈍化する米国インフレ率

米国の出口戦略は「不完全雇用率」を見れば頓挫する可能性は低い注:1. 「コア」は食料およびエネルギーを除く。2. 「MEP」はMaturity Extension Programの略でいわゆるツイスト・オペに相当。出所:BLS、BEAよりクレディ・アグリコル証券作成 拡大画像表示

 6月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でイェレンFRB議長が指摘したように、携帯電話の通話料金や処方薬の価格など一部の品目の値下がりがインフレ率の足を引っ張った。しかしそのような個別品目の影響を除いても、2017年に入ってからの米国のインフレ率は上伸力を欠いている。バランスシート縮小に踏み出そうとしているFRBの出口戦略に影響はでないのかどうか。

米国のインフレ率
気持ち悪い足元の減速

 今後も米国のインフレ率は低下の一途を辿るのだろうか。鍵を握るのは賃金である。

 賃金と物価は多くの国で一定の連動性を有しており、そのような連動性は米国や日本でも見られる。

 そこで、米国と日本のそれぞれの、CPIと時間当たり賃金の相関関係を推計した。