このときリーチ数よりも、接触回数を重視しようと、なるべく学生と話し、関わることに注力しました。

 そこで、学生との接触回数を重視するために、当時、まだスタンダードでなかったSkype面接も行い、Facebookでも「即レス」を意識しました。

 当時の私は、年末年始の時期、大晦日や元旦にもパソコンにはりつき、Facebookに書き込んでくれる学生にすぐにリアクションを行うほど。「休暇中なのにパソコンばっかり!」という白い目に耐えながら、Facebookの書き込みのために用意した2台目のパソコンに向き合っていたことを思い出します。

「大量に集めない」採用方針

 私たちが目指す世界は、「1名応募1名採用」という、極めてシンプルな世界です。

 従来型の「集める(母集団を形成する)→選考(選抜)する」という流れは、結局は「集める(母集団形成)」ことに力点が置かれ、本来の採用数をいかに上回るかであり、結果、それは“選ぶ”ではなく、どう“落とす”かにつながるという、学生・企業双方にとって極めて無駄であり非効率なやり方です。そこからどう本質的な採用へ切り替えるかを考え続けました。

「集めない」を決めた私たちは、自分たちの考えを発信し、それに呼応してくれた人たちだけにつながる。それも「ボタンクリック」という簡単な方法ではなく、話し合い→集まり→また話し合う、というインタラクティブな活動の中で形成されていくものです。それらはSNSというツールがあってこそのものでした。

 一見非効率に思えるかもしれませんが、本来必要なプロセスに最もリソースを配分し、「集める」という非効率につながる活動をやめたからこそできたことでもあります。

 結果として、互いに深い部分まで理解しあった人たちが集まり、辞退もほぼゼロという採用にもつながりました。これらは、Facebookという仕組みがなければ実現しなかったでしょう。

 また、この時期には、同業他社と協力してセミナーを実施することも試みました。ある菓子メーカーと協力して「お菓子な就活セミナー」と題したコラボレーションに取り組み、製菓業界を知ってもらうことにトライしたのです。

 私は、同業ほど手を結んで採用活動を行うことが、結果として良い人材を惹きつけると考えています。

 一見、採用ライバルと思われる企業と組むことで、より大きな集客効果が見込めます。また、同業だからこそ、業界・業種・職種、という外形的な判断基準で訴求するのではなく、それぞれの企業風土・事業戦略・こだわりといった、「そこで働く」に大きく影響する点がフォーカスされ、本来企業が発信しなければらない情報が伝えやすくなるのです。

 もしそうしたいう状況で振り向いてくれる学生が少なければ、それは企業としてもっと根本的な問題があるためで、採用の問題ではないでしょう。会社そのものを見直す必要があるとも言えます。