会議をまわすにはアナウンサーの「仕切り術」に学べ右から松本和也氏、秋山進氏

ナレーター、ビジネスパーソン向けに音声表現コンサルタントとして活躍する松本和也氏が『心に届く話し方 65のルール』を上梓した。これを記念して松本氏と本連載著者の秋山進氏が「人に伝わる話し方」について対談した。NHK時代の秘話から、場によって使い分けるファシリテーションのあり方など、ビジネスに使える手法が盛りだくさんの対談前半をお送りする。(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意、撮影/小原孝博

二役を適宜切り替え
視聴者を番組に導入する

秋山進 松本さんが出演された番組は「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」や「英語でしゃべらナイト」など、大変印象に残っています。報道番組やスポーツの中継などご活躍の幅は広かったと思うのですが、なぜNHKを退職されたのですか。

松本和也 2016年6月にNHKを退社しました。退社前は、体調不良のため番組を交代し、休養してからNHK放送文化研究所に異動して専任研究員になりましたが、その時点で「話す」仕事はやりきったという思いがありました。とはいえ自分にできることは司会やアナウンスという、ある種の表現に関わることです。23年間考えてきた表現についてのノウハウを役立ててもらうことはできないかと考え、スピーチのコンサルティングをする「マツモトメソッド」を設立しました。同じ頃に『心に届く話し方 65のルール』(ダイヤモンド社 7月13日発刊)を書くお話もいただきました。

秋山 松本さんの、視聴者の気持ちを捉えて離さないナレーションや司会には、いつも感銘を受けていました。動物番組の「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」では、直前のニュース番組から視聴者の意識を即座に異国や生物の世界に切り替える。ナレーションによって短時間での導入が無理なく行われていますね。

松本 映像やテロップなど複合的な演出によって、ニュースからバラエティ番組へと視聴者の意識を切り替えます。ナレーションで工夫していたのは、自分の中に「二役いる」という感覚を持つことでした。