例えばある人は、自分の強みは顧客との会話にあると見定め、顧客とのコミュニケーションを集中的に研究しました。徹底した事前準備を行い、“相手以上に相手を知る”ことによって、圧倒的な信頼を勝ち得、究極の姿である“営業せずして売る”段階を目指す、いわば、顧客の潜在ニーズを顕在化させるプロセスです。

 潜在ニーズは、顧客本人にとってまだ曖昧なニーズです。ですからこれを明確化し、顕在化させるプロセスが重要です。事前準備は、顧客の置かれた状況や背景を明らかにするのが目的です。次に、その顧客が抱えている不満、現状でどんなことが問題点と思っているのかをコミュニケーションの中で明らかにします。さらに、その問題点から顧客の将来への悪影響を示唆し、危機感や問題意識を強く認識させることによって顕在ニーズとしていくわけです。

 彼は、自らの体験をベースに顧客コミュニケーションを研究して、自分なりの営業体系を作り上げました。そして、それを本にしたのです。『サムライ営業』(経済界)という本です。

 彼は営業プロフェッショナルに満足することなく、さらに上を目指してマイスターの域にまで上り詰めたのです。ちなみにその彼は大西芳明氏という方ですが、ユアサ商事で営業マンとしてのキャリアを開始した後、リクルートの伝説の営業マンを経て楽天に転職し、取締役執行役員となり、2015年に独立しました。

 彼のように、プロフェッショナルにとどまらず、さらにマイスターにまでなっていくような人は、すべからく皆、明確に自らのキャリア設計をしており、その実現に向けて必死に努力をしています。営業パーソン全員が営業マイスターにならなくてはいけないということではありませんが、もし自分が営業のプロになると決めたのであれば、自分なりの強みを認識し、それを磨き上げる努力をするのは当然のことだと思います。

初めて中小企業診断士の資格が
意味を持つと思った瞬間

 経営コンサルタントという職種も曖昧なものです。これさえ取得すればよい資格といったわかりやすい武器もありません。自分なりの武器を作り、他との差別化をいかに図るかが勝負なのです。自分なりのユニークな考え方、問題発見能力や問題解決能力を磨いていくしかないわけです。

 よく、中小企業診断士の資格を取るのが経営コンサルタントになる近道ではないかといわれます。どうでしょうか。これはあくまでも個人的な見解ですが、中小企業診断士は、取るのが難しい割にはそれだけでは十分ではない資格だと思います。

 ただ、目的次第では意味を持つこともあります。ある人はとある会社の人事部に在籍していました。最初にお会いした時、「非常に勉強好きな方だな」と思いました。人事部員でしたが、人事分野に限らず広く経営学を学び、派生的にマーケティングや財務会計も学んでいたのです。