私は勉強好きな方が趣味で学んでいるのだと思っていました。そして、とうとう、難関の中小企業診断士に挑戦するとの決意を聞いて、「そこまで来てしまったのか」と正直に言って少々呆れた思いでいました。しかし、私の認識は間違っていたのです。

本連載の著者・野田稔さんの
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『実はおもしろい経営戦略の話』
野田稔
208ページ
SBクリエイティブ
800円(税別)
弱者が強者に勝つ方法
経営戦略の基本から、企業の実例を交えた勝ちパターンのつくり方、戦略の立て方、タイプ別に見る生き残る企業と自滅する企業、未来企業の特徴までをやさしく解説。

 彼が経営学とその周辺領域を学んでいたのは、単なる趣味ではなく、独自の考えに基づく、自分なりの“人事プロフェショナルへの道”を極めるための合目的的な学びだったのです。

 つまり、「人事部ほど、戦略的な考え方をしなくてはいけない部署はない」という考えです。なぜならば、人というものは実際に力を発揮するまでにタイムラグがあるので、そのタイムラグを考慮すると、早め、早めに準備する必要があるからです。人材を経営資源と捉えると、他の経営資源以上に計画的に備えておかなければなりません。だから、自分は企業の経営戦略を学んで、会社がどちらの方向に進むのか、進むべきなのかを自分自身で戦略を立てられるくらいにまでなった上で人事という仕事をしたいと考えたのです。

 ここまで人事というものを突き詰めて理解した上で、経営の勉強に精を出していたわけです。

 さらにある時、レーダーチャートで自分が今まで身につけた能力を分析してみると、どうも凹凸がある。尖っている部分もそれなりにあるけれど、まだ凹んでいる部分も少なくない。確かに、自身を振り返ってみてそういう実感もある。そこで、そのレーダーチャートをもう少し理想的な形にしたい。強みを伸ばすことよりも、弱みを補いたい。そこで、中小企業診断士の資格取得のための勉強を始めた、というのです。

 私もその動機であれば、その結論は決して間違いではないと思いました。この動機は、私がこれまで聞いた中で、もっとも中小企業診断士の資格を取る価値があると思った瞬間でした。

 普通はそこまではしないでしょう。しかし、自らの定めた道を歩むために、効率的に学ぶ道しるべとして資格取得の勉強するのはとても良い方法でしょう。資格取得が目的なのではなく、資格取得のプロセスでバランスよく学んでいくという方法です。これもまた、資格勉強の正しい在り方ではないでしょうか。

(明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授 野田 稔)