[東京 12日 ロイター] - 半導体子会社売却の見通しが立たなくなっている東芝<6502.T>の信用が、徐々に劣化しつつある。取引銀行団は6月下旬、従来設定していたコミットメントラインから追加融資として約1000億円を実行したが、期日は1週間に設定。毎週借り換え手続きを取ることを条件とした。銀行団の不安感は広がっており、早期に売却先を決定できなければ、下位行の離反も招きかねない情勢だ。

<崩れかねないメインシナリオ>

「さっさと売却先を決めてくれないと、取締役会がもたない。社外取締役からは非常に厳しいことを言われている」──。

取引銀行の関係者は、こう嘆く。取締役会では毎回、社外取締役から東芝向け融資の回収可能性について、厳しく問い詰められるという。

東芝や取引銀行団は、半導体メモリー子会社を2兆円で売却し、来年3月末には債務超過を脱し、上場廃止を回避するというメインシナリオを描いてきた。

しかし、長引く売却先の選定は、こうしたシナリオの実現可能性を少しずつ低下させ、東芝の信用も劣化させている。

実際、銀行団の対応も厳しくなってきた。関係者によると、東芝は6月末、三井住友銀行やみずほ銀行などが従来から設定していた総額6800億円のコミットメントラインに対して、売却する半導体子会社の株式を担保として提供することを決めた。

合弁パートナーの米ウエスタンデジタル(WD)<WDC.O>の同意が必要と判断していたが、法律的に問題ないとする専門家の見解を得て踏み切った。

これを受けて、主要7行は6月下旬に1080億円の追加融資を実行。ただし、期日は1週間で区切り、毎週借り換えの手続きを踏む条件だ。関係者は「状況をその都度見させてほしいということだ」と明かし、与信管理を注意深く行う必要があるとの考えを示す。

<見えなくなった時間軸>

「もはやどこでもいいから決めてくれ」──。別の取引銀行幹部は、こう吐露する。

東芝は、優先交渉先の米系ファンドのベインキャピタルと産業革新機構、韓国SKハイニックス<000660.KS>、日本政策投資銀行の連合体と協議を重ねている。関係者は「6月28日の定時株主総会を意識した急ごしらえのコンソーシアム。それだけに、いざ契約となると穴だらけなのが分かった」という。

SKハイニックスは当初、融資による参画を提案していたにもかかわらず、その後に転換社債に変更し、一定程度の株式を保有する方針を表明。革新機構や政投銀も反対の意向で、溝は埋まっていない。

さらに「革新機構や政投銀などのフィナンシャル・スポンサーは、訴訟リスクを負えない」(連合関係者)として、WDの訴訟リスクをのみ込んでほしいとする東芝とも折り合っていないのが現状だ。

こうした中で、東芝は11日の銀行団との会合で、合弁パートナーのWD、さらに台湾の鴻海精密工業<2317.TW>とも交渉を始めたことを明らかにした。

銀行団が抱く懸念は、次の時間軸が見えない点だ。「『いつまでに』という締切が見えなくなっている。もはや『決められない』ループにはまり込んでいる」と、先の役員は嘆く。

各国の独禁法の審査手続きを考えれば、残された時間は決して長くはない。さらに「時間がかかればかかるほど、首位の韓国サムスン電子<005930.KS>の背中がどんどん遠くなる」(主力行役員)との指摘も出ている。

(布施太郎 編集:田巻一彦)