学校の先生をしている嫁は、「家にあげてもらえるだけいいと思え」と言い放ち、息子は嫁に何も言えない。

「負けないでと思いながら、いつも精一杯綺麗にさせていただくんです」

 ヒロコさんがもうひとつ、変化を感じるのは不倫だ。「昔は伏し目がちに漏らす方が多かったのに、今は聞いて聞いてと自慢げで、ハラハラする」。

 ある50代後半のお客さんは、「この店に来る時にたまたま乗ったタクシー運転手が初恋の人の声にそっくりで、連絡先を交換した」と興奮気味だった。その1ヵ月後に来店した際、「例の彼と付き合っている、年下よ」と目を輝かせ、2ヵ月後のクリスマス前には、「プレゼントは何が欲しい? と聞いたら、リボンをつけたキミだって」と笑い、携帯電話で撮ったツーショット写真を見せてくれたという。

「奔放な恋をする“孫あり不倫”が増えています。美容院は密室だし、話しやすいのでしょうね」

 もちろん泥沼のドラマばかりではない。ヒロコさんは、7歳の時から20年間店に通う女性の髪を切り続けているが、“わが子”のように愛しいという。

「七五三の着付をしてあげた子が、成人式に来て、『次は結婚式の時によろしく、誰か相手いない?』と慕ってくれる。いつか、その子の子どもの髪も切りたい」

 悩みなら何でも聞くわ、とヒロコさんは笑った。

(文/藤村かおり)

dot.より転載