2007年6月に始まった対円での米ドル安ですが、すでに4年以上経過しています。

 これは平均的な米ドル安継続期間の約3年を大きく上回るものですが、米国の景気不安が再燃し、財政赤字問題に再び注目が集まる中で、この米ドル安・円高は止まらないと、皆さんは思われるでしょうか?

 今回は、「そう絶望するものでもない」ということをご説明したいと思います。

米国の長期金利は6%に跳ね上がる可能性があった

 ここに来て、米ドル安リスクとしてあらためてクローズアップされてきたのが米国の財政赤字問題です。

 この8月に、有力格付け会社の1社が米国債の格付けを最高ランクの「トリプルA」から格下げしたことで、大いに関心を集めるところとなりました。

 もともと、「100年に一度の危機」を乗り切るために、財政・金融の政策を総動員した結果である未曾有の財政赤字拡大は、米ドルなど米国の金融市場をトリプル暴落に向かわせる懸念のあるものでした。

 たとえば「資料1」をご覧下さい。これは、米国の財政収支、ならびに2年債と10年債の利回りスプレッドのグラフを重ねたものです。

 両者には一定の相関関係があるのですが、その相関関係からすると、未曾有の財政赤字拡大を受けて、長短金利のスプレッドも未曾有の拡大となっていることが示唆されていました。

資料1

米国市場の暴落リスクは最悪期を脱した。<br />円高・ドル安は「経験則どおり」に反転へ!

 

 単純に、財政赤字と同じくスプレッドが拡大するならば、長短金利差は5%に拡大する見通しとなっていました。

 かりに、2年債利回りが1%だとして、10年債利回りがそれより5%高いのなら6%になります。

 つまり、未曾有の財政赤字拡大を受けて、債券価格暴落、利回り暴騰で、米国の長期金利(10年債の金利)は6%に跳ね上がる可能性があったということです。

未曾有の財政赤字拡大は未曾有のドル安をもたらす

 次に「資料2」をご覧下さい(※)。今度は財政収支と米ドルを重ねてみました。ここで示した米ドルとは、米ドルの総合力を示す実効相場というものです。

 こんなふうに見ると、米ドルと財政収支の関係もかなり相関性が高いことがわかります。

 その意味では、財政収支こそが米ドルなのです。

(※編集部注:財政収支のグラフは「資料1」と「資料2」では上下が逆転しており、「資料2」では下へ行くほど悪化を示す)

資料2

米国市場の暴落リスクは最悪期を脱した。<br />円高・ドル安は「経験則どおり」に反転へ!

 

 財政赤字が未曾有の拡大となっていることは、未曾有の米ドルの下落がもたらす可能性があったことを、このグラフは示していました。

 こんなふうに見てくると、米国債の格下げではじめて一般の関心を集めるところとなりましたが、そもそも、未曾有の財政赤字拡大が米国の金融市場をトリプル暴落の危険に追い込むことは、十分に予見されたことだったと思います。

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