最近は、自分のキャリアを語るだけでなく、プロアスリートのあり方やその社会的意義を自ら検証した著書も少なくない。

WAYS OF GRACE: Stories of Activism, Adversity, and How Sports Can Bring Us Together/James Blake

 ジェームズ・ブレークといえば、USオープンに出場するためにニューヨークの私もよく利用するグランドセントラル駅の上に建てられたホテルに滞在していたときに、その玄関口で、いきなりニューヨーク市警に取り押さえられ、連行されたエピソードでも知られている。人種のるつぼニューヨークで生まれ育った彼が改めて人種差別と向き合い、アスリートに何ができるのか、どう模範を示してきた先達がいるのかを綴った本だ。ちなみにタイトルのWays of Graceは、初の黒人プロテニス選手としてグランドスラム優勝を果たしたアーサー・アッシュの自伝、“Days of Grace”に引っ掛けている。

ビジネスにも生かせるアスリートのストーリー

 そして肝心のビジネスとの関連だが、アメリカの場合、トップアスリートは、自分を「ブランド」として売り出すマーケティングに精通したビジネスパーソンであると言える。一方で、卓越したアスリートらを研究して学者やビジネスパーソンの側から書かれた本もある。注目株の2冊を紹介しよう。

THE BRAVE ATHLETE: Calm the F*ck Down and Rise to the Occasion/Simon Marshall, Lesley Peterson

 アスリートが直面する様々な問題――試合前の緊張感や、自分の体へのコンプレックス、ケガやスランプに陥った時にどうやってそのスパイラルを乗り越えられるか、まさに「根性論」を科学しました、という内容だが、スポーツでなくとも、どうやったらスーパービジネスパーソンになれるのか、受験や会議でのプレゼンでの心構えにも応用できる。タイトルにswear word(汚い罵り言葉)が入っていることからわかるように、まるでビシッと叱ってくれる上司のような語り口が心地よい。

LIFE AS SPORT: What Top Athletes Can Teach You about How to Win in Life/Jonathan Fader

 セラピー大好きなアメリカでは野球チームにもお付きの心理学者がいて、勝つためのマインドに選手を導いている。ニューヨーク・メッツの担当医でもあり、何百人というプロアスリートに関わってきた著者が、アスリートが試合に勝つための心理作戦をスポーツ以外のことにも応用できると示している本。勝とうという意欲を養い、そのために何をすべきかを見極め、自分で練習メソッドを組み立てるための教科書だが、変わったメソッドを実行しているプロアスリートも多く、思わずイチロー選手のことを思い出してしまった。

 ここに出てくる「ピーク・パフォーマンスを引き出す」という言葉は最近他の本でも見られ、昨年あたりからバズワードになっている感がある。

 というわけで、毎日のようにマスコミに取り上げられる錦織圭や羽生結弦を拝むのもいいのだが、いつの日か、彼らが自らの言葉で自分を語った本を読めることを楽しみにしている。