仕事はできるが、もっとも扱いが難しい「くせ者」

 それでは、各ゾーンのメンバーにどう対応していけば、結束力を高められるでしょうか。

 リーダーにとって、もっとも扱いが難しいのはゾーンⅢ「くせ者」です。仕事の能力は高いので、チーム内外での人気が高かったり、お客さまからの評価も高いのですが、チームの共通目標への関心は低く、醒めている人です。

 この「くせ者」が活躍しはじめると、共通の目標を無視して、違う目標に向かうこともあります。それでも仕事はできる人なので、なにかしらの成果が出ることも多いのです。たとえば、共通の目標に向かってあくせくしてなかなか結果が出ていないときに、こうした成果を目にすると、「くせ者」を支持する人たちも現れてきます。その結果、リーダーの目指す共通の目標とは違う方向へ進もうとする人たちが出て、チームはバラバラになってしまいます。

 この「くせ者」を、いち早く、ゾーンⅠの「プロフェッショナル」にすることが結束力を高めるコツですが、「くせ者」を無理に「プロフェッショナル」にしようとしても、うまくいかないことが多いのです。説得しても動いてくれません。

 むしろ「くせ者」の持つ不満、過去の痛みをよく知ることです。なぜ「くせ者」が、実力はあるのに共通の目標に理解を示そうとしないのか。それをリーダーが理解してくれるまでは、「くせ者」は動かないのです。

 リーダーが「くせ者」の言葉に共感しながら耳を傾けることができれば、やがて「くせ者」は自ら「プロフェッショナル」へ向かっていきます。それまで、じっくり待つことです。

 ゾーンⅣの「アマチュア」の人たちをゾーンⅡの「お友だち」にし、いまゾーンⅡにいる「お友だち」をゾーンⅠ「プロフェッショナル」にするように働きかけることも大切です。

 この「メンバー・ポートフォリオ」は、リーダーが一人でこっそりメンバーを査定するようなものではありません。「いま、私たちのチームはこうなっていて、あなたは、いまこのゾーンにいる」とメンバーと状況を把握し合うための見取り図として活用してください。

 そして「早く『プロフェッショナル』になりたい」と思ってもらうことです。そのために何をするかを話し合って、お互いに高め合っていく動きが出てくると、結束力を強化することにもつながります。