次世代の子どもたちは、生まれたときから当たり前のように人工知能(AI)と接することになる。だが、現在の教育体制がそれに対応できているかといえば、それは一部にすぎない。子どもたちがAI時代を生き抜くために、具体的に何をすべきなのか。


 たいていの人は、自動運転車や音声アシスタントなど、人口知能(AI)テクノロジー製品を革新的と考える。だが、こうした夢のような製品は次世代にとって、生まれたときからずっと存在していることになる。AIは彼らにとって、単なるツール以上のものとなるだろう。ときに仕事仲間となり、ときに生活の一部として、ごく身近な存在になるはずだ。

 次世代を担う子どもたちが将来、AIやビッグデータを効果的に使えるようになるには、またAIとビッグデータに内在する限界を理解して、より優れたプラットフォームや知的システムを構築するようになるには、いまから準備させておく必要がある。そのためには、初等教育のカリキュラムを調整する必要があり、なおかつ、長年の懸案だった中等教育レベルにおけるコンピュータサイエンス指導要領の大幅な改善も必要になるだろう。

 たとえば、子どもたちがどのようにAIや自動化のテクノロジーを駆使した製品と触れ合っているか、その現状を考えてみよう。

 音声アシスタントのSiriに「オレンジ色のドレスを着たセレブの写真を見せて」と命じれば、1秒も経たないうちに、スマートフォンの画面にテイラー・スウィフトの写真が現れる。現時点では、魔法のように感じるかもしれない。しかし、もちろん魔法ではない。

 AIシステムを設計するにはまず、1つの問題をいくつもの小さな問題に入念に分解し、それら小さな問題それぞれのソリューションが互いに伝達し合えるようにする。前述の例では、AIプログラムを使って音声信号をいくつもの塊に分け、それらをクラウドに送信して分析し、それぞれにふさわしい意味を決定した後、その結果を一連の検索クエリに翻訳する。それから、このクエリ一式に何百万もの対応する答えをソートしてランク付けする。クラウドが規模の変化に柔軟に対応できるため、ここまでの所要時間はわずか100分の1秒単位だ。

 これは、けっして難解な技術ではない。ただ、その構成要素は必然的に莫大な数にのぼる。音声信号を解釈するための波形分析、機械にドレスの識別の仕方を教えるための機械学習、情報を保護するための暗号化などは、そのほんの数例だ。

 構成要素の多くは、いくつものアプリですでに使い回されてきた標準的なものだが、それは孤高の天才がガレージでつくり上げる類のものではない。この種のテクノロジーを創出するには、複数のチームを構築し、チームの中で働き、そして、他のチームが創出したソリューションを統合する能力が必須である。これこそが、次世代を担う子どもたちに教えていく必要のあるスキルだ。

 また、職場では日常的な情報処理や手作業をAIが引き受けることになるので、人間の働き手が備えるAIとは異なる資質、すなわち創造性や順応性、そして対人能力に一層の重きを置く必要もある。