[上海/香港 21日 ロイター] - 運転手の仕事を引退したYao Huiliangさんは以前、株式市場で小型株を素早く売買して利益を稼ぐいわゆるカジノスタイルの取引に熱中していたが、最近にはそのやり方で損が出ることを踏まえ、大手銀行などの優良株投資に切り替えつつある。「優良株はそんなに変動しないので手軽に稼げないが、安全だ」と話す。

この姿勢はまさに、中国政府が目指す方向に合致している。つまり中国資産の一部にあるバブルをつぶし、資本市場の国際的な信頼を築くという道だ。

そしてはじけたバブルの1つと多くの市場関係者にみなされているのは、新興企業の上場比率が高い深センの創業版(チャイネクスト)だろう。同市場の指数は、習近平国家主席が金融リスクへの対応強化を宣言したことを受け、2015年1月以来の安値に沈んだ。

対照的に上海と深センの優良企業300銘柄で構成するCSI300指数は1年半ぶりの高値で推移している。

習氏の発言に続いて堅調な経済指標の発表が続いたため、当局はバブル退治に動ける余裕が生まれたとの見方が広がった。

大口投資家は、小型株から優良株に資金が移動していることについて、中国資本市場が成熟化してきた表れだと歓迎している。

ウェルズ・ファーゴ・アセット・マネジメントのシニア・ポートフォリオマネジャー、アンソニー・クラッグ氏は中国株式市場の特徴が変化していると指摘。国内投資家は、投資先企業を判断する際にしっかりした利益を計上しているか、長期的な成長が期待できるかといった面を重視していると説明した。

かつて個人投資家の間では、小型株の売買が人気を博した。より大手に買収されそうな企業や、次の「ユニコーン」(時価総額10億ドル超の新興企業)候補を買えばてっとり早くもうかると思われたからだ。

クラッグ氏は「5年前の市場は極めて投機的だった。値動きが激しく、投機色が強い半面、ほとんど利益が出ていない企業の取引が多かった」と話す。しかし過去1年で様相が変わり、質の高い企業の方が値動きが良くなっているという。

同氏は「市場は大人になり、カジノ的な性格が後退し、より適正な投資を行う市場になった」と評価している。

<なお過大評価>

創業版指数は17日に5.1%下落した後も、30カ月来の安値圏での値動きが続いている。中国が大幅な株安局面に陥る直前だった15年6月につけた過去最高値からはほぼ60%も下がった。

それでも一部の市場関係者は、創業版の銘柄はなお過大評価されていると考えている。同指数銘柄の株価収益率(PER)は46倍に達しているからだ。

マイノリティ・アセット・マネジメントの運用担当者Zhou Liang氏は「創業版の苦難はまだ終わっていない。相場が2、3年以内に今の半分になっても別に驚かない。リスク志向が弱まっている中で、これからの投資機会は割高な成長株ではなく、それほど過大評価されていない優良株にこそ存在する」と述べた。

同氏は35億元(5億1800万ドル)の資産を運用し、過去1年間で投資先を国有銀行や保険会社に移した。

別の複数の投資家も、中国が資本市場の対外開放を加速させていることを理由に、優良株への資金シフトが続くとみている。米指数算出会社MSCIは、来年6月から大手中国企業222社を新興国株指数に組み入れる。ある証券アナリストは、これによって海外資金が流れ込んでくると予想されることも、中国投資家の行動変化を後押ししており、彼らは新たな資金流入で恩恵を受けそうな大手有名企業のファンダメンタルズに一段と着目しつつある、と分析した。

<締め付け>

小型株の投機に対する締め付けは着々と進んでいて、当局は赤字企業の一部について上場廃止を迫ったり、制裁金、あるいは相場操縦の事実が判明した経営者の投獄といった処分を下している。

元運転手のYaoさんは、とりわけ地元メディアから「中国のカール・アイカーン」や「ヘッジファンド投資家の第一人者」などと持ち上げられていた上海澤熙投資のトップが5年半の禁錮判決を下された事実を重く受け止めている。

多くの新興企業の成長が行き詰まったことも、小型株買いの熱を冷ました。直近では創業版の花形だった楽視網信息技術<300104.SZ>の親会社が資金難に陥り、一部資産を裁判所に差し押さえられた。

中国招商証券は、創業版銘柄の今年の平均増益率は、従来見通しの25%から1桁台にまで鈍化し、創業版指数は底値を探り続けると予想している。

(Samuel Shen、Marius Zaharia記者)