大賞受賞のお知らせはすぐに。
ご家族が喜んでいるのが電話越しに聞こえてきました。

――この段階での「担当」として、まず何をやりました?

廣畑 まず作者に最終選考に残ったことを報告すること。僕はすぐにお電話で報告させていただきました。指方さんはとても淡々と話を聞いてくださっていました。応募原稿をゲラ組して、選考委員の先生方に読んでいただくための簡易製本をつくりました。その他は、最終選考会までの段取りを適宜やり取りすることでしょうか。これらが「担当」の主な仕事です。ちなみに、九州は小倉在住ということもあり、この時点ではまだお会いできていませんでした。

――最終選考会の様子は?

廣畑 行われたのは、昨年(2010年)の11月。最終選考の会場にはもちろん僕も詰めていて、会場の隣の間仕切りされたスペースで選考の様子をずっと聞いていました。というのも、先生方の評価を指方さんに伝えようと思っていたからです。大賞が取れるかどうかは、誰にもわかりません。もし取れなかったら、指方さんとのお付き合いもこれで終わりになるかもしれない。じゃあ、最低でも指方さんの今後の創作活動にとって参考になれば嬉しいなと思って、選考委員の方々のご意見を後でお伝えできるようにと必死でメモしていました。

――ドキドキものですね。そして結果は、初の2作同時受賞。

廣畑 最終選考に残った3作品とも非常に高い評価で、どれが受賞してもおかしくない雰囲気でした。結果的にはこの作品の受賞が決まり、ほっとしたのを覚えています。

――大賞が決まって、最初に何を?

廣畑 すぐに携帯電話で作者の指方さんにご報告しました。もともと指方さんはとても穏やかな話しぶりで、落ち着いた方だという印象がありましたが、この時は喜んでおられるのが伝わってきました。

 でもそれよりも印象的だったのは、指方さんの電話の後ろにおられるご家族の喜ぶ声が聞こえてきたことです。お子さんの声で「やったー」という声が聞こえてきました。

――それは嬉しいね。

廣畑 はい! 指方さんは、小説を書き始めてから約15年経つそうです。これまで大きな文芸賞で何度も最終候補まで残ったこともあるのですが、出版につながる賞の受賞は今回が初めてとのことでした。そういう事情もあり、自分の作品がより多くの人に読んでもらえる機会ができたことがとても嬉しかったと、後から教えてくださいました。