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岸博幸のクリエイティブ国富論

金融だけが強みじゃない
英国から日本が本当に学ぶべき事

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第13回】 2008年10月31日
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 前回説明したように、今回の金融危機の背後に潜む本質的な原因は、米国の巨額の経常収支赤字です。米国政府も今は金融システムの維持に忙殺されていますが、それが一段落したら、経常収支赤字の原因である旺盛な個人消費を低下させようとするでしょう。

 それは日本にはどのような影響をもたらすでしょうか。個人消費が低下すれば米国の輸入も減少しますので、日本の貿易黒字も減少することになります。既に円高が急激に進んでおり、日本の輸出産業に打撃を与えていますが、米国の現状(巨額の財政赤字と経常収支赤字)を考えると、為替レートは今後も円高傾向が続くでしょう。今後はそれに加え、個人消費の低下という形での米国のマクロ・インバランスの是正が日本に大きな影響を及ぼすことになるのです。

 その予兆は既に現れています。日本の8月の貿易収支は26年ぶりに赤字となり、先週発表された今年度上半期の貿易黒字は前年比85%減と27年ぶりの低水準に落ち込みました。原油などの原材料高が大きく影響したのは間違いありませんが、対米黒字が前年同期比13%減となったことに注目すべきです。今後はこうした傾向が恒常的になると考えるべきではないでしょうか。

 加えて、日本の経常収支黒字を縮小させる要因は国内にも内在しています。少子高齢化と人口減少です。この二つは中長期に日本の貯蓄率を低下させることになるのです。その結果、(投資-貯蓄)+財政赤字=経常収支赤字というマクロ経済の恒等式に従えば、中長期的には日本の経常収支黒字が減少する方向にあるのです。

 以上をまとめれば、為替レートの持続的な円高傾向、米国のマクロ・インバランスの是正、日本の貯蓄率の低下という3つの要因から、日本の経常収支黒字は今後縮小の方向に向かわざるを得ないのです。

日本が目指すべき方向

 こうした外的・内的な環境変化が日本の産業構造の変化を求めていると言えます。それは何故でしょうか。日本経済が未だに外需(輸出)頼りだからです。例えば、2002年以降の景気回復も製造業の輸出がその牽引車だったのが、その証左だと思います。しかし、日本の得意先であった米国の外需が中長期的には減少し、その恩恵を被って来た中国なども今後内需拡大に取り組むであろうことを考えると、日本経済も製造業の輸出に依存し続けることは出来ません。現実的にも、アジアなどの途上国とのグローバル競争が激化する中で、製造業の輸出に多くを期待し続けるのは酷です。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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