カナダ最大級の養豚企業・ハイライフが、世界市場で勝ち残るために選択したのは日本市場だった。商品選択基準が世界で最も厳しいといわれる市場だからこそ、同社「一貫生産」の強みが生きる。今、日本市場で、輸入ポークのイメージを覆す“HyLife Pork”ブランドの構築が始まっている。

香りがよく、うまみ、コクがあり、臭みのない豚肉を実現

 従来は米国産、デンマーク産が多かった輸入ポーク。その日本市場で今、存在感を高めつつあるのがカナダ産の輸入ポークだ。その中でもカナダ最大級の養豚企業であるハイライフ(HyLife)の輸入ポークが注目を集めている。

HyLife Ltd.
グラント・ラザルックCEO

 ハイライフの最大の特徴は、世界でも例の少ない「一貫生産」を行っていること。消費者に届く最終商品の品質にこだわり、飼料生産から種豚開発、養豚、食肉加工、それらをつなぐ物流までを一元管理、高品質の豚肉を安定して生産できるシステムを構築しているのだ。

 その同社が最重視するのは日本市場。グラント・ラザルックCEOは、「日本は豚肉の消費量が多いが、国産に対する信頼が厚く、海外企業にとっては厳しい市場だ。だがその厳しさをクリアして認められれば、ハイライフという企業と他社の差別化につながる。何よりも日本市場でこそ、当社の一貫生産のノウハウが有効であると考えた」と日本市場進出の狙いを語る。

日本人好みの肉質、安心・安全、国産よりリーズナブルな「HyLife Pork」。日本市場でのブランド浸透を誓う

 同社で日本向けプログラムがスタートしたのは2010年。12年には伊藤忠商事と資本提携し、「日本人の味覚にマッチした豚肉の開発」に取り組んだ。日本人好みの豚肉の条件とは、“あっさりした肉質で、身が柔らかく、赤身にも脂が乗り、薄くカットしやすい硬さを持つ”というものだ。そのため飼料を日本向けに独自配合、コーンや大豆に加えて、大麦や小麦を多く配合した。麦類が多いと、脂身が白く融点が高くなる。しゃぶしゃぶや豚カツ、しょうが焼きなどの日本食の場合、脂身の融点が低いと脂が溶け出して「くどい」と感じるのだ。

 また品種開発にも取り組み、「LWD」と呼ばれる三元豚の開発をスタート。それに加えて飼料にオレガノ、タイム、シナモンなどのハーブを加え、香りが良くうま味やコクがありながら、臭みのない豚肉を実現したのも同社が先駆けである。

 さらに豚はストレスに弱い動物で、肉の品質に大きく影響するため、さまざまな工夫をした。前足が短く視野が狭い豚のために、と畜場への経路のスロープを緩やかにするなど、ストレス要因を徹底的に排除したのだ。最終的な商品化を行う食肉加工工場でも、日本向けを意識して改善を行った。例えば、日本のスーパーなどでスライスの歩留まりを良くする、使い勝手の良い規格やカットを定めた。

 「改善点が見つかっても、自分たちで関わっていなければ修正することはできない。その点、当社の強みである一貫生産が非常に大きな効果を発揮し、独自のプレミアムポークを作り上げることに成功したのです」とラザルックCEOは胸を張る。