[ロンドン 26日 ロイター] - 欧州連合(EU)各国政府の借り入れで中心的な役割を果たしている銀行、いわゆるプライマリーディーラーは、英国のEU離脱(ブレグジット)後も取引を続けたいならば、一部の事業をロンドンからEU内へ移転せざるを得なくなる可能性がある。事情に詳しい3人の銀行幹部が明らかにした。

EU各国の借り入れの大半は、ロンドンを拠点とする投資銀行が手掛けている。しかし、ブレグジット後にこれまで利用してきた「単一パスポート制度(1加盟国で事業認可を得るとEU全域でサービス提供できる権利)」を喪失しかねない。

3人の話では、EU当局はプライマリーディーラーがブレグジット後にEU内で事業の相当部分を展開することを義務付けるルールを課すことを検討中。いずれも欧州政府債販売事業に携わり、これまで何度も各国政府と対話をしてきたこの3人によると、EU当局が考えているのは米国と同じルールだ。米国では、国債を取り扱うプライマリーディーラーは必ず国内に事業拠点を持つことを定めている。

ロンドンからの移転が必要な具体的な事業の規模を論じるのは時期尚早とはいえ、発行事業すべてに加えて、国債販売・割り当てやマーケットメークなど関連サービスが対象に含まれてもおかしくない、と3人は説明した。

EU欧州委員会はコメントを拒否し、ドイツ、フランス、イタリアの財務省も回答しないか、コメントを避けた。

欧州の銀行監督権限を持つ欧州中央銀行(ECB)は、プライマリーディーラーを巡る問題の動きを注視している。

ユーロ圏国債関連取引のシェアが大きいのはバークレイズ<BARC.L>、ゴールドマン・サックス<GS.N>、HSBC<HSBA.L>、JPモルガン<JPM.N>など。ノムラ<8604.T>やモルガン・スタンレー<MS.N>も積極的に関与している。

<移転か撤退か>

複数の金融業界幹部によると、欧州国債の最大7割が、ロンドンを拠点とする銀行によって入札におけるマーケットメーカーとして、ないしはシンジケート団を通じた投資家への直接販売の形でさばかれている。

プライマリーディーラーは毎週入札を通じて数十億ユーロ規模の国債を引き受ける。またトムソン・ロイターのデータに基づくと、シンジケート団経由の昨年の国債販売は1480億ユーロに上った。

先の3人のうち2人は、一部の銀行が既にある程度のプライマリーディーラーのポジションをロンドンから欧州の他の金融センターに移す準備を進めている、と打ち明けた。一方で別の1人は、プライマリーディーラーの業務から全面撤退する銀行が今後出てくるかもしれないと予想した。

さらに4人目の銀行幹部は、自身が所属する銀行はロンドンから一部事業移転を求められた場合、余分なコストの発生を理由にいくつかの国でプライマリーディーラー業務から手を引くことを検討していると話した。

別の金融業界幹部の話では、大手行の欧州国債担当人員はおよそ15─20人という例が一般的だが、移転すべき人数はもっと多くなる可能性がある。この人物は「プライマリーディーラー業務だけ切り離して考えるのは非常に難しい。なぜなら他の多くの業務にも広く影響が波及するからだ。全般的に見て、多くの銀行は数百人を欧州大陸に移すことになるだろう」とみている。

<妥協模索も>

既に取引相手の銀行数が減ってきている欧州各国の債務管理当局にとって、この先プライマリーディーラー業務から撤退する銀行が出てくれば、借り入れコスト上昇につながる恐れもある。

ただベルギー債務管理庁のアン・ルクレール長官は、規則が変われば一部のプライマリーディーラーは事業を移転すると信じていると述べた。

ルクレール氏はロイターに「われわれが取引しているプライマリーディーラーはイタリアやフランスと共通であり、これらの金融機関は事業を移転しないとユーロ圏でどの顧客にもサービスを提供できなくなる。それに彼らは、ユーロ圏それぞれの国にではなくどこか1カ国に移れば良いだけの話だろう」と楽観論を示した。

それでも、プライマリーディーラーの数が減れば最も痛手を受けるのが明らかないくつかの小国は妥協案の策定を望んでいる。

ポルトガル債務管理庁のクリスティナ・カサリノ長官はロイターに対して「われわれは双方の当事者に価値ある提案をしなければならない。プライマリーディーラーと緊密に接触し、彼らの懸念に耳を傾けようと思う」と語った。

(Abhinav Ramnarayan、Anjuli Davies記者)