原子力発電所の再稼働をめぐり、住民説明番組で社員にやらせメールを指示した九州電力は企業のコンプライアンス問題に直面した。事実究明中の第三者委員会の郷原信郎委員長に、九電問題について聞いた。
(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)

電力は安全神話の啓蒙をやめ<br />情報開示の徹底をすべきだ<br />――郷原信郎・九州電力第三者委員会<br />委員長インタビューごうはら・のぶお/1955年島根県生まれ。83年検事任官、東京地検特捜部、長崎地検次席検事などを経て2006年弁護士登録。名城大学総合研究所教授、総務省顧問コンプライアンス室長。近著『組織の思考が止まるとき』で検察不祥事から組織コンプライアンスを問う。
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──九州電力の第三者委員会委員長に就任した経緯は。

 2006年に中国電力の土用ダム測量データ改ざん問題にかかわって以来、全国8電力に対してコンプライアンスの講演会を行うなど、電力会社とは付き合いが深い。

「やらせメール」問題が発覚した後、九電は経済産業省に報告書を出した。だが、事実関係が解明されるものではなく、その対策は不十分で、お茶を濁そうとしているように見えた。

 そのときに声がかかった。弁護士の調査チームをつくり第三者委員会を置くことを提案し、9月末までに事実解明と再発防止策をまとめ報告書を出すことにした。

──早速、古川康佐賀県知事のやらせの関与が明らかになった。

 直接的にやらせメールを投稿するよう求めたものではなかったが、九電担当者のメモだけを見ると、古川知事が一方的に要請しているようにも読めた。すぐに確認すると「一般的な経済界の要望が聞こえてこないので、それを表に出すよう言った」という話だった。

 最初に九電社長と会ったときからこの対応に苦慮していると聞いていた。全体から見れば一つの引き金となったことは否定できない。