[東京 31日 ロイター] - 7月の日経平均株価<.N225>は、月間の値幅(高値と安値の差)が344円23銭にとどまった。1986年1月(260円83銭)以来、31年半ぶりの小ささだ。日銀のETF(上場投資信託)買いが下支え効果を発揮する一方、日米政治の不透明感が強く、堅調な景気や企業業績を積極的に評価できないでいる。

<ミクロは好調>

ファンダメンタルズのミクロ面は好調だ。東証1部上場企業(金融除く)の4─6月期業績は、みずほ証券の集計によると、31日時点(時価総額ベースで33.6%の企業が発表)で、営業利益が前年比9.5%増、純利益が同48.9%増となっている。

日本経済新聞社によると、日経平均の予想PER(株価収益率)は14倍台前半。トムソン・ロイターのデータでは、12カ月先の予想ベースで17倍台前半となっている。これに対し、米S&P500種<.spx>は18倍台後半。日本株は米国株に比べ出遅れで割安との見方も多い。

さらに米株が過去最高値を更新するなど、グローバルでのリスクオン環境も継続している。「トランプ米大統領は別にして、米共和党側はそれなりの経済政策を出していくとの期待は根強い。米国企業も好業績が続くと市場は見ている」(岡三アセットマネジメント・シニアストラテジストの前野達志氏)という。

トムソン・ロイターの調査によると、米S&P総合500種指数採用企業の2017年第2・四半期決算は、前年同期比10.8%の増益となる見通しだ。発表を終えた289社中、利益がアナリスト予想を上回った企業は73.0%。長期平均の64%、過去4四半期の平均の71%を上回った。

<日米の政治不安>

しかし、政治面では日米で不透明感が強まっている。国内では学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画に官邸や首相からの圧力がかかったとの疑惑や、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題を受け、内閣支持率が急落した。

さらに米国ではトランプ大統領による政権幹部の相次ぐ交代に加え、28日未明に米上院で医療保険制度改革法(オバマケア)の一部を廃止する法案が否決されるなど、政策運営能力に対する懸念が深まっている。

北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射などを背景に、地政学リスクの高まりへの警戒感も根強い。ドル/円<JPY>は6月末の112.35円から7月11日に114.49円まで上昇したものの、足元は110円半ばと月初より円高に振れている。

eワラント証券・トレーディング部ヴァイスプレジデントの堤壮一郎氏は「世界的にボラティリティ―が低下した局面がいつまでも続くと思っている投資家は少ない。いつ大きな変動が起きるのか、逆に不安が高まっている状況にある」と指摘する。

<動かない海外勢>

需給面でみると、7月の値幅が縮小したのは、日本株の方向性を決めることが多い海外勢の動きが乏しかったからだ。

現在明らかになっている7月第3週までの主体別売買動向データでみると、現物と先物合計で約1180億円の売り越しにとどまっている。

しかし、「日本の政治動向に関する海外投資家からの問い合わせは増えている」(外資系証券の日本株運用責任者)という。「安倍退陣」となれば、株安・円高の動きが予想されるだけに、現時点で日本株買いに動くにはリスクも大きい。

一方、日銀は21日まで計2996億円のETF買いを実施。同期間で3390億円を売り越した個人投資家などの売りを吸収した構図になっている。

セゾン投信の瀬下哲雄ポートフォリオマネージャーは、「債券市場からあぶり出たマネーが日本株に流入している印象。株式市場のエネルギー自体が低い中、下落局面の日銀のETF買いは、円高でも日本株が底堅く推移する一因となっているが、価値と価格の関係が崩れている点については危うさもはらんでいる」と話している。

(長田善行 編集:伊賀大記)