ペットのクリニックで獣医師がイヌやネコなどのペットを治療する際に、人間の薬やもともと人間用だった薬を用いることをご存じだろうか。もともとペットの専用薬が少なく、重症なペットについては、獣医師の裁量で人間用の薬を積極的に用いることが少なくない。ペット薬物治療について、取材してみた。(ダイヤモンド・オンライン編集部 山本猛嗣)

ペットの薬は
「人間用」を使うことも

 「なんで弊社の薬がペットの治療コーナーで記事に出ているのですか。うちの薬は動物向けには販売されていないはずです」――。

 もう5年ほど前になるが、筆者が『週刊ダイヤモンド』編集部に在籍していた頃、クスリの特集を担当した。発売後に、ある大手製薬会社の営業担当であるMR(医薬情報担当者)から問い合わせが寄せられたことがある。

 実はペットの薬物治療では、獣医師の裁量で、人間の薬を流用するケースが少なくない(記事中には、当然、そのような注意書きあった)。製薬会社のMRといえば、薬に関するプロである。プロであっても、ペットに関する薬物治療の実態を知らない人が多いのだ。

 ペットに使われる薬は2000種類以上。それを薬の「開発の方法」という視点で見れば、3つに大別できる。つまり、(1)もともとペット薬として臨床試験などを行って開発されたもの、(2)ヒト用の薬を流用したもの、(3)もともとヒト用に開発・使われていた薬をペット用に開発し直した(転用)したもの、である。

 なかなか一般の人には馴染みがないのが(2)と(3)、ヒト用の流用や転用薬だろう。

 特に(2)の「ヒト用の流用」は、当然ながら、ペット用としては承認・販売されてはいない薬である。あえてそれを用いることに、違和感を持つ人も多いだろう。