酒屋で飲む「角打ち」
古き良き昭和の伝統

「角打ち(かくうち)」という言葉をご存じだろうか?酒屋さんで缶ビールやカップ酒、缶詰めや乾き物などを買い、そのまま店内もしくは店先で飲むスタイルだ。

酒屋の店先で飲む「角打ち」が個性をまとって再流行の兆し角打ちができる酒屋の店頭。ビールや酒、ワインなどを買って店の片隅や奥でそのまま飲むことができる

 お客が店の冷蔵庫から飲み物を取り出してレジでお金を払い、そのまま所定の場所で飲むというのが従来のスタイルだが、店によっては、酒屋の売り物とは別に店側が生ビール等を提供するというスタイルもある。いずれにせよ「酒屋で飲む」というのが角打ちの定義だ。

「角打ち」の魅力は、何と言ってもリーズナブルな価格だ。元々は「お客が商品を買って、勝手に飲み出した」というのが誕生の発端だという。お店側も、飲食店のように接客する必要など全くない。そのため商品に少しだけ上乗せされた金額で飲むことができる店が多い。

 また気軽にフラッとお店に入って飲めるというのも捨てがたい魅力だろう。1人で飲むのもよし、他のお客と触れ合って飲むのもよし。古き良き昭和文化に触れながら、とにかく気取らずに自由に飲むことができる、それが「角打ち」の醍醐味だ。

 角打ちの発祥は北九州の炭坑地帯。当時は24時間稼働していた炭坑で交代勤務をしていた労働者が、深夜勤務明けの朝に気軽に一杯、お店で飲めるようにと始まったものと言われている。当時は朝から開いている居酒屋はなかった。しかし働く時間帯はどうであれ、仕事上がりの一杯ほど美味いものはない。

 元々酒屋である「角打ち」は、朝の時間でも開いており、当時の労働者たちの心を鷲掴みにしていった。それから角打ちは全国へと広がり、各土地の地元の店へと根付いていった。