猛暑日の熱中症予防で「食塩中毒」「水中毒」は心配すべきか

暑い日が続いている。熱中症予防には、水分補給や塩分補給が欠かせない。しかし、最近は塩分や水分の過剰摂取による「食塩中毒」や「水中毒」のリスクも報道されつつあり、不安に感じる人もいるだろう。特に、リスクが高いと言われる乳幼児と高齢者の熱中症を予防するにはどうしたらいいのだろうか。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

赤ちゃんにとっては
小さじ1杯の塩が毒になる

「えっ、赤ちゃんって小さじ1杯の塩で死んじゃうの」

 7月上旬、テレビのニュースを見ていて、意外に感じた人も少なくないのではないだろうか。それは、認可外保育施設の元経営者が、預かり保育中だった1歳児に致死量の食塩を混ぜた液体を飲ませ、死亡させたというもの。

 乳児の腎機能は未熟なため、高濃度の食塩水を一度に摂ると脱水状態に陥り、多臓器不全などで死に至る可能性があるという。人間の身体にとって不可欠な塩が、致死量の毒になってしまうのだ。

 小さじ1杯の塩分5gは、ラーメンのスープ1杯分(400~500ml)に相当する。1歳児には無理かもしれないが、4~5歳になれば、調子に乗ってごくごく飲み干してしまう子どももいるだろう。おにぎりにまぶしたり、おやつとして塩きゅうりにしたりして、いつの間にか与えてしまっている親もいるのではないだろうか。

 一方で、熱中症対策を呼びかけるニュースではプラスα的に、「こまめな水分補給」と同時に「塩分も摂りましょう」とアドバイスする。水分を必要以上に摂りすぎたり、大量に汗をかいて体内の塩分量が不足したりすると、血液中のナトリウム濃度が薄くなりすぎる「低ナトリウム血症」になってしまうからだという。

 事件を起こした元経営者が、どうして塩分を大量に与えたのかはわからない。