バブルを支えた
オヤジの「サル山」文化

 記号を共有してコミュニティの一員になると、「ここに属している」という安心感を得られる一方、「ここからは出られない」という縛りに自らをゆだねることにもなります。実際、こうしたコミュニティから出れば、「裏切り者!」「無責任」と言われ、制裁されかねません。

 かくして、コミュニティに忠誠を誓ったメンバーたちは、そのコミュニティのために働きます。そして、内部では権力闘争が勃発する。そう、これは「サル山」のようなシステムなのです。メンバーの立場ごとに役があり、立場を守るには命がけでその役を果たさねばなりません。

 そして、バブル期の日本企業の躍進を支えたのが、このサル山システムでした。「24時間戦えますか?」のテレビCMにもあったように、当時の日本人サラリーマンは、世界市場に乗り込んでモノを売りまくるなど、モーレツに積極的でした。

 ドラッカーは、このサル山システムにおける熾烈な派閥抗争が、日本の経営者の果敢な冒険精神の源泉だと考えました。社内で派閥抗争に明け暮れ、社外ではライバル会社と戦う。まるで戦国時代のようなこの環境は、果てしない消耗とともに、城山三郎の小説が描き出すようなワクワクする冒険物語を生み出してもいたのです。
 
 しかしバブル崩壊と、コンプライアンス遵守など経営手法の進化によって、ボス猿どうしの苛烈な戦いは消えていきました。今では、派閥抗争は悪しき慣習であり、なくさなければならない、というのが常識になっています。

 しかし、戦国時代が終わったから「ホモマゾ」が消えたかというとそうではなく、なんと逆に、さらに「ホモマゾ化」が進んでいるように見えます。ただし、かつての「派閥抗争での勝利」「企業間競争での勝利」という目的はなくなっていますから、手続き論に無意味にこだわるなど、下らない努力を強いる風潮がむしろ蔓延しています。