両社は100年の歴史を有しますが、その権威を保つ裏には長い歴史だけでなく当然実績の裏付けがあります。

 彼らはこれまで行った格付の歴史的評価を受けるため、格付後のデフォルト率などを厳密に計算公表しています。それらが投資家によって支持されてきたことが権威の源泉です。

  その中で働く人間がどういう人間かといいますと、ほとんどはMBAや博士号を持つ優秀な人たちです。

 私の友人でムーディーズにいた人のキャリアを例にとりますと、コロンビア大学のMBAを取得、その間にNY連銀でインターンをしていました。卒業後は大手のインベストメントバンクにクレジット・アナリストとして就職。その後ムーディーズに転職し、長くある産業を担当していましたが、最近、大手の債券専門のファンドに転職してやはりクレジット・アナリストをしています。

 実績の裏付けと優秀な人材を集める格付機関の威光は絶大で、機関投資家のほとんどは投資基準を、例えば「両社の格付でダブルA以上」などの自己規制を行っています。一方で、それが投資判断を誤った時の言い訳にも使われています。

 ではサブプライム問題でAAAの債券が多数デフォルトしたことや高格付の金融機関が破綻したことを、アメリカの投資関係者はどうみているのでしょうか。

 端的に言って、格付機関の権威に大きなバッテンを付けています。その上、今回の米国債の格下げに際して見せたS&Pの不手際、つまり米国政府の将来の債務の見積計算を2兆ドル(160兆円)も計算違いしたという事実は、格付機関そのものが格下げされるほどのインパクトを持ったと思われます。

 投資家はそれに対して、別の手立てを講じ自己防衛しています。私の友人の例がまさにそうで、優秀なアナリストを高額な報酬で雇い入れ、格付機関とは別に独自のクレジット分析をしているのです。