ケーブルがない快適さがウリで今盛り上がっているカテゴリ

 ワイヤレスイヤフォンの究極形態とも言える「トゥルーワイヤレスイヤフォン」。再生機器とイヤフォン間だけでなく、左右のユニットをつなぐケーブルまでなくしたイヤフォンのこと。「完全ワイヤレス」や「左右独立型」、あるいはTrue Wireless Stereoを略して「TWS」と呼ばれたりもするが、メリットはもちろんケーブルがない快適さにある。

トゥルーワイヤレスイヤフォンとは何か? 製品概要と選び方
代表的な製品はAppleの「AirPods」。Bluetooth接続の使いやすさも含めて人気が高い

 たとえばセミワイヤレス(左右ユニットをケーブルでつないだBluetoothイヤフォンを便宜上こう呼ぶことにしよう)のように、首の後に回したケーブルが髪にまとわりつくことも、肌にベトついたりすることもない。マフラーやストールを巻く際にも、ケーブルが邪魔をしない。小型で携帯も楽だし、カバンの中でケーブルが絡まって取り出しにくい、なんてこともない。

 スマートフォンからイヤフォン用のステレオミニジャックが消えつつあるいま、トゥルーワイヤレスイヤフォンは、伸び盛りの製品カテゴリーと言っていい。そこで我々は、2017年6月末までに発売されたトゥルーワイヤレスイヤフォン14機種をテストしてきた。

 製品を比較しながら、このカテゴリーのイヤフォンとはどのようなもので、選ぶ際の決め手はなんなのかを考えていきたい。

テスト済機種

ERATO Rio3MUSE 5APOLLO 7s
i.Tech FreeStereo Twins
Jabra Elite Sports
dashbon sonabuds TWS-H3
fFLAT5 Aria OneAria Two
SOL AMPS AIR
Beat-in Stick/Power Bank
VAVA MOOV 20(VA-BH001)
GRDE S-E6
Apple AirPods(レビュー未公開)

トゥルーワイヤレスの仕組み

 トゥルーワイヤレスの仕組みは意外と複雑だ。筆者のような素人は「ステレオの電波で飛ばすだけじゃん」と思いがちだが、そう簡単にはいかない。まずスマートフォンとイヤフォンをつなぐBluetoothという規格は、1対1の接続が基本。再生装置から左右のイヤフォンへ同時に信号を飛ばすことはできないのだ。

 トゥルーワイヤレスを実現するには、最初に左右どちらか一方のイヤフォンと再生機器をBluetoothで接続。そこからもう一方のイヤフォンと無線で接続する。つまり「スマートフォン→左イヤフォン→右イヤフォン」、あるいは「スマートフォン→右イヤフォン→左イヤフォン」のように、信号をリレーしてステレオ再生を実現しているのだ。

デメリット1 音切れと遅延

 そうした仕組みゆえにデメリットもいくつか生まれる。まず、セミワイヤレスなイヤフォンに比べると、音が途切れやすく、遅延も大きくなりがち。これは先に説明した通り、信号をリレーしているのが原因だ。

 片方のイヤフォンからもう片方へ信号を飛ばす際に、Bluetoothの電波は、人の頭を通り抜けて直進できない。人体のほとんどは水分で構成されているから、2.4GHz帯の電波は吸収されてしまうのだ。そして電波が遠回りしているうちに、ノイズの影響を受けてしまう。これが音切れにつながる。

 加えて左右チャンネルの音が出るタイミングを揃えるのが難しい。左右の信号が同期していないと位相差となり、ステレオ音像が左右にフラフラ動く「フェージング」という現象が起きてしまう。

 こうして左右の信号をリレーしつつ、ステレオ信号を同期するために、ある程度信号をバッファすることから、音声の遅延も大きくなる。動画再生時には、映像に対して音声が遅れて再生される「音ズレ」という現象も起きやすい。

 と、オーディオ的にはデメリットばかり。音質を云々する以前の、再生装置として最低限の性能に関わるものばかりだが、最近の製品ではこうしたデメリットも徐々に解消されつつある。

 その鍵になる技術が、NFMI(近距離磁気誘導=Near Field Magnetic Induction)だ。現状の製品は左右間をBluetoothで接続するものがほとんどだが、NFMIを使うことで、上記のデメリットを解決できる。NFMIは電波と違い人体に吸収されにくく、補聴器で10年以上使われてきた技術だ。

 AppleのAirPodsには、このNFMIが使われているというウワサがあり、8月末発売予定の「EARIN M-2」は、NFMIで有名なNXPセミコンダクターズの技術採用をメーカーが公式発表している。これから採用機種が増えてくるかもしれない。

EARIN、低遅延で音切れを解消させた完全ワイヤレスイヤフォン「M-2」発表
EARIN M-2発表時にNXPセミコンダクターズが解説したNFMIの特徴

デメリット2 紛失リスク

 これはトゥルーワイヤレスの物性からして致し方ないのだが、なにしろ小さいもので見失いやすい。

 机の上でもコロコロと転がったり、紛れてどこかへいなくなりがちだし、指からこぼれ落ちると、ケーブルがないのでそのまま床や地上へ落下し行方不明になる。

 そこで最後にスマートフォンと接続した場所を記録しておき、マップ上にその位置を表示する「ヘッドホンを探す」のような機能も一部機種にある。ただし、位置の記録はGPSデータがよりどころなので、自宅にあるか、外出先で落としたか、その程度の大雑把なことしかわからない。

 イヤフォンの管理については、基本的に人間が頑張るしかない。

トゥルーワイヤレスイヤフォンとは何か? 製品概要と選び方
AirPodsの「iPhone を探す」機能を利用した所在地表示機能はよく知られているが、それと同等のものが高級スポーツモデル「Jabra Sports Elite」にもある。イヤフォンが近くにあればビープ音を鳴らして確認することも可能

スペックの違い1 コーデック

 製品を選ぶ手がかりは、やはりスペックの差。最近のモデルはヘッドセット機能を持ち、汗や水しぶきを防ぐ防水性能を持つのがスタンダード。それ以外の大きな違いは、バッテリー周りとコーデックだ。

 「コーデック」はオーディオ信号を圧縮する規格。なにも表記がない場合はBluetoothのスタンダードである「SBC」が使われているはず。ある程度価格の高いものは「AAC(エーエーシー)」や「aptX(アプトエックス)」にも対応している。

 しかし、低遅延・高音質と言われているこれらのコーデックであっても、トゥルーワイヤレスの場合はあまり関係がない。特に動画の音ズレについては、AACやaptXに対応していてもズレまくる場合もあれば、SBCのみの対応でも、ズレが目立たないものもある。音質の面でaptXやAACに対応していて困ることはないが、音声同期の点では対応していないからダメとも言えない。

スペックの違い2 バッテリー

 トゥルーワイヤレスイヤフォンには、左右両側にバッテリーが必要。そして内蔵できるバッテリー容量の限界から、バッテリーの持続時間には限りがある。音楽連続再生時間は、短いもので2時間、長いものは6時間。

 再生時間は長いほどいいに決まっているが、再生時間を長くしようとすると、バッテリーの容量を増やさなければならず、イヤフォンは大きく重くなる。逆に軽く小さくしようとすると、バッテリーの持続時間は短くなってしまう。

 バランスをどのへんに置くかで、トゥルーワイヤレスイヤフォンの基本デザインは決まってしまうようなところがある。小型軽量のモデルの場合は、ある程度持続時間は諦めなければならない。

スペックの違い3 充電ケース

 そこで、おおむね1万円以上のイヤフォンには、専用デザインの充電ケースが付属する。イヤフォン本体のバッテリー容量を補うための付属品と考えてもいい。充電ケースの中にもバッテリーが入っていて、使わないときにイヤフォンをしまっておけば、勝手に充電してくれるのだ。

 充電ケースでイヤフォン本体をフルチャージできる回数は2回から4回程度。イヤフォン本体の連続再生時間と合わせれば、1日使える程度の時間にはなる。

トゥルーワイヤレスイヤフォンとは何か? 製品概要と選び方
ERATO APOLLO 7s。イヤフォン単体での連続再生時間は3時間。充電ケース内蔵バッテリーで2回フルチャージできる
トゥルーワイヤレスイヤフォンとは何か? 製品概要と選び方
充電ケースはアクセサリー要素もあるので、各社デザインで工夫を見せているところでもある

 では、充電ケースが付かない1万円以下の製品はどうするかと言えば、Y字型USBケーブル(イヤフォン側はmicroUSB端子)が付属している。これを両方のイヤフォンに直接接続して充電する。

 充電に関してはそれでも特に困らない。むしろ電源として市販のモバイルバッテリーを使えるので便利とも言える。充電ケース付きのイヤフォンは充電要接点が独自の形状をしているため、付属のケース以外では充電できないのだ。

トゥルーワイヤレスイヤフォンとは何か? 製品概要と選び方
ERATO Rio3。充電ケースは付属しないがモバイルバッテリーで充電できる

 しかし、使わないときにイヤフォンをケースに収納する習慣さえつければ、充電と同時に紛失リスクを下げることもできる。いやいや、ケースごとなくしてしまえば元も子もない例もあるぞ。

 と、ここは諸説紛々。紛失リスクに関しては、やはり人間が頑張るしかないし、低価格の機種にはケースが付かないので、そこは予算に応じて決まることになる。

 次回からは価格による違いについて、1万円以下、1万円台、2万円以上と、3つの価格帯に分けてレビューしていきたい。